フランソワ=グザヴィエ・ロトが一新した都響の響き:東京都交響楽団 都響スペシャル

ファーストネームがフランシスコ=ザビエルだというだけで只者ではありませんが、実際のところ、この10年で大きな存在感を持つに至っているのがこの人。目下空席であるコンセルトヘボウの常任候補として、アンドリス・ネルソンスなどと並んで名前が挙げられている実力者です。見た目よりも若くて、49歳。

2年ぶりの都響との共演で彼が用意してくれたのが、通好みの素晴らしいプログラム。前半がラモーの「優雅なインドの国々」組曲、そしてルベルのバレエ音楽「四大元素」。後半がラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲。なんともゾクゾクしますね。

 

ラモー:「優雅なインドの国々」組曲

この時代の曲なので、クラリネットはお休み。そのかわり(?)ファゴットは4本。このうちの2本はチェロの補強でコンティヌオを担当。活躍したのはパーカッション。山伏の錫杖を思わせるような楽器(あれ、なんというんでしょうね?)も登場して大活躍でした。

サヴァールやピノックといった古楽の領域の人たちが得意とする曲ですけれど、これをモダン楽器で演奏するところに面白さがありました。

もちろん「優雅」なバレー曲なのですが、この後のルベルの曲もそうであったように、なにかしらの原始性を感じさせるところがあり、さすがは鬼才、一筋縄では行きませんね。

矢部コンマスの、大きく弧を描くようなリードが素晴らしい。20分くらいの曲でしたが、とても楽しむことができました。

 

ルベル:バレエ音楽「四大元素」

作曲者が生きたのはルイ14世からルイ15世にかけてのフランス。冒頭の「カオス」という曲にはこの時代の音楽にしてはおそらく斬新な不協和音が使われていて、素晴らしい演奏効果。

楽器編成は基本的にラモーと同じなのですが、管楽器には不必要なくらいに技巧的なパッセージがありました。ロトはそういった箇所で奏者を立たせて、ビジュアル的にも強調。オーボエとファゴットは大活躍。ホルンにも厳しいソロがあったのですが、残念ながら不調でした。あそこが決まれば…

この曲も非常に面白いものでしたが、意外なことに日本初演ではないのですね。それこそサヴァールとかが来日した時に演奏したのでしょうか。

前半の2曲は私たちにフランス音楽の偉大な伝統を教えてくれるような趣きがありました。吉田秀和さんが訳したクセジュから出ている音楽史の本とかを読んだだけではわからない世界でした。

 

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲

これがまあ、恐ろしいくらいの大名演。このわずか4日前にサロネンのマーラー9番があったことを考えると、東京という街の音楽シーンは凄いことになってますね。

この曲、もちろん初めて聴いたわけではありませんが、しかし初めて聴いたような感覚を味わいました。それくらい素晴らしい演奏だったのです。

ほんとうに優れた指揮者であるかどうかを判断する基準は、私の場合、1)オーケストラの響きを変えることができるか、2)曲の印象を一新することができるか、だと考えています。この日のロトは、この両方。たいしたものです。

さて、「ダフニスとクロエ」。ロトが率いる都響の演奏は、この曲が出来上がったのが、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」の1年後、「春の祭典」の前年であることをまざまざと感じさせるものでした。この曲、それなりに聴いてきたつもりですが、あらためて「こんな曲だったのか!」と感心しました。これだけの大編成が必要なことも納得です。

 

オケについて

矢部さんが率いる都響の弦、ほんとうに凄い。弦だけであればフィルハーモニアを凌駕していたことは確実です。管も広田さんのオーボエ、岡本さんのファゴット、ブラヴォーでした。難点はホルンでしたね。攻めて外すのではなく、守って外して遅れる場面があり、なんとも残念でありました。あとはパーカッション隊。大活躍でした。

今年7回目のコンサート。「大当たり」でした。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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