38年越しの宿願成就:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第347回定期演奏会

私がはじめて飯守泰次郎さんの演奏を聴いたのは1983年の都響の定期演奏会。このときのプログラムはブラームスのヴァイオリン協奏曲(ソリストは加藤知子さん)、そしてムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」でした。演奏会のあと、アンケート用紙に「次はこの人のシューマンを聴きたい」と書いたのですが、そのコメントは次の回の定期演奏会プログラムに掲載されたのでした。

あれから38年! いままで接する機会のなかった交響曲第2番を聴くことができ、これで1〜4番の全曲が飯守さんの指揮でコンプリートしたことになります。

今宵の演奏会は前半に交響曲第1番、後半に第2番。 コンマスは戸澤さん。お客の入りは7割くらい。

シューマン:交響曲第1番

予想していたことではあったのですが、やはり重い。これを単に「重い」ととらえるか、あるいは「重厚な」と捉えるかは趣味によるでしょうね。

シューマンの1番は、さすが若書きの作品だけあって、楽想の転換に才知の煌めきがあると私は思っているのですけれど、飯守さんはあまり変化を強調せず、ひた押しに押して行きます。そうすると、津波が膨れ上がるような力感が生まれるんですよね。そう、ブルックナーのような。

オーケストラは大力演で、前半終了時の拍手の際に、オケが足踏みして飯守さんを讃えておりました。終演後であればともかく、休憩の前では異例なことです。

シューマン:交響曲第2番

これは名演でした。私は、今日は後半の方が良かったと思います。

出だしのトランペットのペザンテな響きが素晴らしい。チェロ、コントラバスを豊かに歌わせて、立体感のある音楽をつくっていくのは、さすが飯守さん。木管群もよく聞こえます。そもそも1番に比べると2番の方が重くて憂鬱な感じがあるので、ひたひたと押していくアプローチには合っているのではないでしょうか。

本来であればブラボーが飛び交ったであろう演奏でした。

オーケストラについて

東京シティフィル、著しい進境ぶり。 伸び盛りのオケですね。

今日、印象に残ったのは首席トランペットの松本亜希さん。2番のみの出演だったのですが、冒頭の憂いを含んだ響きの素晴らしさ。先月のティペットの作品では、イギリスの近衛兵の軍服の緋色を連想させるような華やかな音色を聴かせてくれていたことを思うと、表現の多彩さに脱帽です。Brava !

やはり後半でトップを吹いたホルンの谷さんも良かった。トランペットと重なる部分での音色は、まさにシューマンが欲しかったものではなかったかと。

木管はフルート竹山さん、オーボエ本多さん、クラリネット山口さん、ファゴット皆神さん。良いアンサンブル。皆神さんは先月の「レンミンカイネンの帰郷」の冒頭では悪目立ちしていましたけれど、あれは指揮者の指示だったのですね。今日はフルート、オーボエを支えて素晴らしかったです。

とても良い演奏会でした。来年の3、4番が楽しみです。

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元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して17周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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