巨匠エリアフ・インバル。彼は録音が多いことでも知られています。現役の指揮者でブルックナーとマーラーの交響曲全集を録音しているのは彼と、リッカルド・シャイーだけ。インバルはこれに加えてショスタコーヴィッチとブラームスの全集も作っているので、いま生きている指揮者の中では、その点では無双の存在と言えるかもしれません。
そんな彼もベートーヴェンとなると、3、5、7、9番のみ。(古い映像で2番があるようなのですが、入手困難な様子。)奇数番号に限定されているのがいかにも彼らしいというか… さて6番はどうなるかと興味津々で、池袋まで赴きました。ただ、個人的には、どうせなら4番&8番とかを聴かせてもらえたらなぁと思うのですけれど。
曲目は前半が6番「田園」、後半が7番。
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
予想に違わず、快速テンポ。私は弦楽器に疎いのでよくわからないのですが、弓をいっぱいに引き切るところが随所にあって、それが音楽に推進力を与えているように思われました。
昔のカラヤンの「流線型」と評されるような流麗な演奏とは全く異なり、がっしりとした構造。この上に名手揃いの都響の木管が明滅します。素晴らしい。うっとりします。
もちろん第四楽章は強烈なインパクト。何を振らせてもインバルはインバル、と思わされました。「奇数番号のように演奏された田園」ですかね。
ベートーヴェン:交響曲第7番
都響とは3、5、7番の録音がすでにあるわけですが、インバルの芸風に一番似合うのはこの7番なのではないでしょうか。
基本は6番と同じ路線なのですが、インバルとしては妥協が見えたかなと思ったのはオーボエ(広田さん)の扱い。彼が美音で歌うところは、存分に歌うことを許す、という感じ。そのあとクラリネットが引き継いで歌おうとすると、それは抑えていたように見えたのですが私の気のせいでしょうか。
7番に関しては、一昨年に素晴らしい演奏に接して感銘を受けていたのですよね。そう、この日のコンマスを務められていた矢部さんが率いる「晴れオケ」の7番。このときの第二楽章の冒頭部は繊細を極めていましたが、そのあたりをインバルに求めるのはお門違いですね。この日の主要メンバーは「晴れオケ」と結構かぶっているので、皆様どう感じられたかを伺ってみたいと思いました。
最後は予想に違わず、大盛り上がりに盛り上がって終演しました。インバルも会心の笑み。(この写真は都響の twitter からお借りしたものです。)
オーケストラについて
コンマスは矢部さん、サイドは山本さん。矢部さんのリードは、素人が見ていてもその素晴らしさがわかるほど。
木管は敬称略で柳原(fl)、広田(ob)、サトー(cl)、岡本(fg)。金管は高橋(tp)、高瀬(tb)、西條(hr)。みなさん、呆れるほど素晴らしい。曲が曲なので、広田さんは燦然と輝いておられました。
今年4回めのコンサート。いまのところ外れなし。