世界最高峰の室内オケが日本に!:トリトン晴れた海のオーケストラ第6回演奏会

今年はノット/東響、ペンデレッキ/都響と、高水準のベートーヴェンの7番に接することができているわけですが、今日は指揮者なしで、この2つを遥かに凌駕する演奏を聴くことができました。感無量です。

都響のソロ・コンサートマスターである矢部さんを中心にするトリトン晴れた海のオーケストラ。今まで私が赴くときはいつも雨なのですが、今日も例外ではなく細かい雨。 灰色の運河を渡って第一生命ホールへ。(第一回は文字通り快晴であったとのことですが、このとき私は聴きに行けずに涙を飲んだのです。)

曲目は前半がベートーヴェンの交響曲第4番。後半が第7番。この並びは昔、カール・ベームが好んだものですね。

 

ベートーヴェン:交響曲第4番

3番「エロイカ」と5番「運命」に挟まれて人気はありませんが、私はこの曲が大好きです。地味とはいえ、演奏するには難しい曲。

第一楽章冒頭の幽玄な立ち上がり。そして導入部の末尾の、第一主題が現れる直前のフェルマータのついた弦のフォルティッシモの部分。ここで作曲者の意図を超える演奏を繰り広げたのは1943年のフルトヴェングラー/ベルリン・フィルですが、今日はそれに僅差で迫る迫真の響き。いやいや、凄い。

アンサンブルがビシッと揃っていることはもちろんなのですが、ピアニシモからフォルティシモに至る強弱の幅の広さと、ニュアンスの多彩さ! 私はもう圧倒されて聴き入っておりました。

現時点でこの曲の定盤はカルロス・クライバーのライブかと思いますが、今日はそれを超えたと思います。それも指揮者なしで。

第四楽章のファゴット・ソロ、岡本さん、ブラヴォーでした。かなり速いテンポだったにもかかわらず、シングル・タンギングで吹かれておられたように聴きました。お見事でした。

 

ベートーヴェン:交響曲第7番

出だしから艶やかに響く広田さんのオーボエ。これだけでぞくっと来ますよね。岡田さんのティンパニの打ち込みも素晴らしい。そして、矢部コンマスの刻む、「これ以外は無かろう」と思われるテンポ。冒頭の3分で、とんでもない名演の予感。

何よりも凄かったのは第二楽章冒頭の、第一ヴァイオリンが出てくるまでの部分。ルドルフ・ケンペがシュターツカペレ・ドレースデンを振ったリハーサルの隠し取りの音源があって、私は今までそれがベストであると思っていましたが、今日はさらに一段深い演奏でした。今までに(私は)聴いたことのないフレージング。しかも絶妙な強弱のニュアンスが付くのです。疑いもなく、世界最高峰だと私は思います。

第三楽章、第四楽章ももちろんとても素晴らしい演奏だったのですが、私にとっては第二楽章が全てでした。こんな演奏はおそらく二度と聴けないような気がします。

オルフェウス室内管弦楽団と比べて…

実はオルフェウスはベートヴェンの交響曲の録音には熱心ではなくて、5番と7番があるのみ。それも彼らの本来のグラモフォンではなく、エイベックスの録音。カーネギー・ホールでのライブです。来日記念盤という位置付けなので、日本以外では売られていないものかもしれません。

これはこれで良い演奏であるとは思います。しかし、今日の「晴れ海」とは次元が違います。オルフェウスは「指揮者なしでこれは凄いね」という演奏。「晴れ海」は指揮者云々のレヴェルを超えて、ベートーヴェンが屹立する演奏。

今日、私たちは世界最高峰の演奏を聴くことができて、心から満足でした。感謝です。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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