「てっぺん」を軽やかに、鮮やかに示してくれた庄司紗矢香と、蒸気機関車の驀進を思わせるベートーヴェンの7番:東京都交響楽団第880回定期演奏会

先週、都響から1枚のハガキが。何かと思えば、この日の冒頭の曲をペンデレッキ御大ではなく、アシスタントが振ることの通知でした。「そんなことはどうでもいいよ、聴きたいのは庄司紗矢香だし。それにハガキ代が無駄。」とつぶやきながらサントリー・ホールへ。この日は男性客比率がすごく高かったですね。手嶋龍くんの逆バージョンでしょうか(笑)。

曲目は前半がペンデレッキの「平和のための前奏曲」、そして同じくペンデレッキのヴァイオリン協奏曲第2番「メタモルフォーゼン」。ソリストは庄司紗矢香。後半はベートーヴェンの交響曲第7番。

 

ペンデレッキ:平和のための前奏曲

演奏時間約5分の、金管楽器のみの曲。どちらかといえばファンファーレみたいなものですね。指揮はアシスタントのマチェイ・トヴォレクさん。ペンデレッキが高齢(86歳!)であるため、全曲を振り通すのが難しいという理由での代役起用。

まあ、アシスタントの指揮者に振らせてあげようということなんでしょう。この演奏会の前は広島交響楽団でほぼ同じプログラム(後半が7番でなくて8番)だったのですが、このときは日本人の女性指揮者に後半を任せたようです。

あのカラヤンも仮病を使ってアシスタントに振らせることがありましたし、今回もまあそんなことかと。トヴォレクさん、はっきりした指揮でよかったのではないでしょうか。日本デビューになりましたね。

 

ペンデレッキ:ヴァイオリン協奏曲第2番「メタモルフォーゼン」

これがこの日のメイン。 ゆるやかに3つのパートから構成され、40分強を要する大曲です。

庄司紗矢香さんの演奏は凄かった。大胆であり、繊細であり、機敏。解説によれば、この曲はアンネ=ゾフィー・ムターを想定して作曲されたとのことですが、むしろ庄司さんに合っているのではないかと感じました。彼女のために書かれたと聞いても、違和感はないかと。

庄司さん、とんでもなく高いところに到達しているように思います。現在、男性、女性を問わず、日本のヴァイオリニストの「てっぺん」は彼女なのではないでしょうか。

それにしてもペンデレッキのエネルギーというか、情念の強さにも感心しました。「メタモルフォーゼン」ですから、「変容」ということなのでしょうけれど、何から何に「変容する」のかは知りませんが、「変容する」ことを表現するのに40分以上をかけるというのはすごいですよね。あのリヒャルト・シュトラウスでも30分弱ですよ。日本の作曲家だったら、この半分くらいの演奏時間の曲になるのではないでしょうか。

アンコールはバッハの無伴奏から。これも素晴らしかった。弱音でもサントリー・ホールが鳴っていましたからね。ほんとうにたいしたものです。

 

ベートーヴェン:交響曲第7番

広響では7番の代わりに8番で、ペンデレッキは振らずに代役を起用したわけですが、都響では御大が振りました。

テンポはペンデレッキによるのだと思いますが、バランスとか強弱は都響に(つまりは矢部コンマスに)委ねられた演奏であったように聴きました。ペンデレッキ の意図を、都響が存分に汲み尽くしたということなのでしょう。

蒸気機関車が轟々と驀進するような演奏でした。コントラバスも6本ながらブンブン鳴ってましたし。(ただし、チェロは弱いかな)。私は結構こういうのは好きなので、楽しむことができました。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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