最近 twitter で、「アマオケはCDを模倣しているだけだからダメなんだ」という趣旨の、傲岸不遜としか言いようのない言説が注目を集めていますが、正直言って、頭がおかしいのではないかと思います。アマオケの凄さは、その旺盛な表現意欲では無いでしょうか。日本のアマオケの最高峰の一つである東京ユヴェントス・フィルハーモニーの活動再開記念演奏会は、まさに圧倒的な感動をもたらすものでした。
この日、この時間は東京シティフィル、そしてN響と重なっていましたが、躊躇なくユヴェントスのミューザ川崎へ。曲目はアイヴズの「答えのない質問」、ヴォーン・ウィリアムズの「トマス・タリスの主題による幻想曲」、そしてメインはマーラーの交響曲第二番「復活」。 指揮はこのオケの創設者でもある、坂入健司郎さん。
ちょっと油断してチケット取りに出遅れた結果、4階最前列となってしまいました。ミューザでの4階席ははじめて。でも、結果としては正解でした。
アイヴズ:「答えのない質問」
この曲、私は実演では2度目ですが、今回は実質的に初めて聴くのに等しいような演奏となりました。4階L席にバンダの弦楽アンサンブルが陣取り、ステージ上の弦楽オケと、4階Rのあたりから聴こえてくるバンダのソロトランペットが紡ぎ出す響きは精妙かつ挑戦的。まさに質問を投げかけるようにして終わりました。インパクトの強い、第一曲。
ヴォーン・ウィリアムズ:「トマス・タリスの主題による幻想曲」
アイヴズからアタッカで入ります。この曲は、私は初めて。しっかりとして、豊かな弦、とりわけチェロ、コントラバス。なんとも芳醇な響きに酔いました。コンマス、そしてヴィオラ首席のソロも美しい。
マーラー:交響曲第二番「復活」
ここで休憩を入れずに、マーラーへ。とはいえ、ステージのセットアップが必要なため、アタッカで、というわけにはいきませんでしたが。第一楽章が終わった時点で休憩となりました。これは確か初演時のマーラーの指示と合致している筈。
そもそも劇的につくられているため、余程のことが無い限り感動させられてしまう曲。しかし今回の演奏は格別な感動を呼び起こすものでした。それは「音楽を演奏する喜び」の力なのだと思います。坂入さんの棒の下で、ひたむきな想いが押し寄せてくるような演奏。オケだけでなく合唱も。
そして、創意工夫に満ちた演奏でもありました。「奇を衒う」印象が無いのは、その工夫が本質を突いているからだと思います。私はカーチュン・ウォンを連想しました。
オケは上手いです。80年代のプロオケよりも上手いのでは。単に上手いだけではなくて、旺盛な表現意欲を感じました。第四楽章のメゾソプラノの歌を引き継ぐオーボエのソロであるとか、第五楽章のトロンボーンの技術的に完璧なソロとか。過剰な域にまで到達していたEsクラとか。
10本のコントラバスの威力も十分。中央後ろに配置したのも奏功していたように思います。
声楽のソリストも素晴らしかった。ソプラノの中江さんの第五楽章の歌い出しには、心底痺れました。
とにかく素晴らしい演奏でした。私は今までに聴いた「復活」の中で、一番感動しました。 坂入さんの今後にますます期待したいと思います。