今年のフェスタサマーミューザも大詰めで、9日にフィナーレを迎えます。なんとも名残惜しい限りです。(オリンピックはそうでもないけれど。)トリはこのホールを本拠地とする東響が務めるのは当然として、ミューザ川崎でのトリのひとつ前(「しばり」って呼ぶのでしたっけ?)はマエストロ・シモーノこと下野竜也さん指揮による、われらが日フィル。移動の途中に驟雨に襲われながらも川崎へ。
曲目は下野さんらしく凝ったもので、前半にウェーバーのオベロン序曲、ヴォーン・ウィリアムスのグリーンスリーヴスによる幻想曲、そしてニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲。 後半はベートーヴェンの「エグモント」全曲。
ウェーバー:オベロン序曲
どちらかというと玄人好みの曲で、得意としていたのはジョージ・セルとか、ラファエル・クーベリック。耳の良い巨匠たちですね。案外とバランスの調整が難しい曲であるということかもしれません。
下野さんのテンポ、バランスともに文句なし。ミューザで聴く日フィルも、良い音でした。
ヴォーン・ウィリアムス:グリーンスリーヴスによる幻想曲
フルートを残して管楽器が全員下がります。真鍋さんの綺麗なフルート・ソロに始まって、弦楽合奏が美しい。チェロ首席の菊池さんの存在感。ヴィオラの内声部に透かし彫りのように光をあてて、美しい演奏でした。
ニコライ:「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
うって変わって陽気な曲。下野さんも楽しそうに指揮。新しい首席奏者(伊藤さん)が就任して、トロンボーンセクションは音に厚みが増しましたね。
ベートーヴェン:「エグモント」全曲
序曲は超有名ですが、全曲通して演奏されることは滅多にありません。音源でも、セル/ヴィーンフィル(これは名盤です)があるくらい? ただ下野さんはこの曲をレパートリーにしていて、一昨年に広響と演奏しています。
語り役に宮本益光さん、そしてソプラノの石橋栄実さん。宮本さんに歌わせないのはちょっと勿体ない。
メリハリの効いた、見通しの良い演奏でした。リハーサル1回でこの完成度は驚異的。下野さんの力量と、日フィルの柔軟さがなせるワザでしょうね。
オーボエの大きなソロがあるのですが、杉原さん、お見事。ファゴットも高音域でいろいろと動いているのですけれど、鈴木さんはさすがに上手い。今日はクラリネットは伊藤さんではなく照沼さんでしたが、運動能力を感じさせる素晴らしい演奏。
宮本さんの語りも劇的で立派。日本語が明晰なのも良いですね。ソプラノの石橋さんは、私は初めてなのですが、とてもよかったです。
オーケストラについて
日フィルは良いオケです。私は在京オケの中で、いちばんシンパシーを感じます。音に暖かみがあるんです。
今日は扇谷さんがコンマス、サイドが田之倉さん。第二バイオリン竹内さん、ヴィオラはデイヴィッド、チェロは菊池さん。木管はフルート真鍋さん、オーボエ杉原さん、クラ照沼さん、ファゴット鈴木さん。とても良いアンサンブル。トランペットは東京シティフィルの松本さんが客演で来られていて、燦然としたソロを聴かせてくれました。Brava !
日フィル主催公演ではないにもかかわらず、平井理事長と常務理事の後藤さんが来られていて、日フィル愛好家の相手をされておられました。このあたりは本当に立派です。
とても良い演奏会でした。大満足。