マエストロ広上「初挑戦」のブルックナー:日本フィルハーモニー交響楽団第731回東京定期演奏会

広上さん/日フィルの実演を初めて聴いたのは、たしか1992年。日フィルの正指揮者になられてすぐの頃だったと思います。所沢の航空公園のホールまで、わざわざ出かけました。遠かった!オール・ベートーヴェンのプログラムで、ヴァイオリン協奏曲(ソリストは徳永二男さん)と、田園だった記憶が指揮台での動きはコミカルだけど、とても構造がよくわかる指揮で、感心したことを覚えています。

以来、かれこれ30年近くにわたって広上さんの音楽を聴いているわけですがl、ブルックナーを聴かせてもらった記憶はありません。日フィルの「中の人」に確認したら、やはり初挑戦とのことでした。(マエストロは、「これからどんどんやります!」と宣言された由。楽しみですね。)

なぜいきなり6番かというと、これは推測ですが、昨年の東京交響楽団への代演が機縁だったのではないかと思います。ジョナサン・ノットがブルックナーの6番を振る予定でしたが来日できず、広上さんが登板。結果としては曲目変更になったのですが、このときに期するものがあったのではないでしょうか。

さて、曲目はというと、前半にドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲。ソリストは小林美樹さん。後半がブルックナーの6番。

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲

名曲ではあるのでしょうけれど、大名曲ではないという微妙な位置付けの曲。ひさしぶりに実演で聞いたのですが、ヴァイオリニストは気持ちよく弾ける一方で、オーケストラは伴奏に徹するような趣きがあるんですね。指揮者にしてみると、案外、バランスとかは難しいのではないでしょうか。音色の設計も問われるような気がしましたし。

ソリストの小林美樹さんは体格にも恵まれて、豊かな音。よく歌って、この曲の魅力を十分に示す演奏でした。

広上さんの指揮はさすがに盤石。ソリストは安心して弾けたことと思います。

ブルックナー:交響曲第6番

私はブルックナーの交響曲の中で、この6番を偏愛していて、この10年くらいの間での国内での実演にはほとんど接しています。(と言いつつ、つい先週の鈴木優人/九大オケは聴けませんでしたが

そんな私の個人的な感想を申し上げますと、第一楽章を除いて、とても良かったかと。

第一楽章は、スタートのテンポが少し速すぎたように思います。最初から速いと、アッチェレランドした時にちょっとセカセカしてしまい、曲想に合わなくなるのではないでしょうか。その一方、もちろん推進感というか、力感は得られるのですけれど。

この曲の白眉である第二楽章は、とても良かった。ツボを押さえつつ、あざとくない演奏。ここで過度な耽溺は禁物だと私は思っていて、その昔シカゴでバレンボイムの演奏を聴いたとき、強烈な違和感を覚えた記憶は今でも鮮明です。

第三、第四楽章では豪快に金管を鳴りわたり、ブルックナーの醍醐味満載でありました。

広上さんのブルックナー、期待できると思います。次は何番でしょうかね。最初からして6番でしたから、次は2番あたりかな。

オーケストラについて

コンマスは扇谷さん。サイドは千葉さん。ブルックナーで大事なヴィオラは、安達さんとデイヴィッドの2枚並びで、とても良かった。木管はいつものようにフルート真鍋、オーボエ杉原、クラリネット伊藤、ファゴット鈴木さん。互いに寄り添うようなアンサンブルで、ここは日フィルの魅力の一つです。とくに真鍋さんと杉原さんの合わせの素晴らしさ。

金管群は絶好調でしたね。ホルンの信末さん、トランペットのオッタヴィオ、お見事。そして、素晴らしいブルックナーサウンドを響かせてくれたのが、トロンボーンとチューバのセクション。惚れ惚れする出来栄えでありました。

今日はブルックナーの日だったのに、珍しく男性トイレの列が長くありませんでした。まさかのブルヲタ衰退かと驚きましたが、考えてみればコロナで席数制限されているからですね(笑)。

この記事を書いた人

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して15周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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