今年の4月に読売日本交響楽団と協演して、バーンスタインの交響曲第2番「不安の時代」で圧倒的なピアノ・ソロを披露した河村尚子。青葉台フィリア・ホールの「美神」シリーズのコンサートに登場するというので、出かけてきました。
すごかったですよ。
曲目は前半がピアノソナタ第18番と21番「ワルトシュタイン」。 後半は24番「テレーゼ」と23番「熱情」。
河村さんはとてもキュートな感じの可愛い女性なのですけれども、目を瞑って聴いていたら誰しもが男性だと思うでしょう。テクニックが素晴らしいのはもちろん、左手が強く、しっかりしたバスを築くため、とても構造的な響きが生まれます。
私の席は6列目の2番なので、彼女が弾く姿を右後ろから眺めるカタチとなりました。鍛え抜かれた敏捷なアスリートを見ているようでした。
前半が終わった時点で、「これはすごい」という嘆声と、「なんだか別の曲を聴いているようだ。」という感想がロビーを満たしていました。
こういう演奏、私は大好きです。
後半の「熱情」には、ただただ感心。 5歳でドイツに渡り、ずっとドイツで過ごしている彼女を聴く限り、アリス・サラ・オットよりもずっとドイツ的です。古いけど、エリー・ナイ(Elly Ney)のようでした。
彼女はこのあいだモーツアルトのピアノ協奏曲21番のCDをリリースしています。いきなり21番というのも面白いですよね。
これもとても構造的な演奏です。第1楽章のカデンツアがモーツアルトの交響曲40番第1楽章を踏まえたような面白いものになっています。
今日の演奏会の後にサイン会があったので、長い列に並んで、質問してみました。「誰のカデンツアですか?」って。
「あ、私が書きました!」
おお、そうなのですね。
この人は今後注目です。1981年生まれですから、37歳ですか。これから聴き続けようと思います。