ファゴット首席、広幡敦子さんのソロとバッティストーニの指揮に脱帽:東京フィルハーモニー交響楽団 第915回オーチャード定期演奏会

東フィルはもちろん在京メジャーオーケストラの一つ。 でも、演奏にバラつきが大きいのと、チケットが不当に高いので、いつしか足を運ぶことが少なくなっておりました。最後に演奏会に行ったのはバッティストーニの第九だから、もう丸2年前ですか。日曜日は久しぶりに、しかも当日券での鑑賞となりました。S席で1万円。やっぱり高いですよね。三木谷さん、なんとかしてくださいな。

さて、なぜ当日になって聴く気になったのか。 天才指揮者、バッティストーニが振るからでしょうか? いえ、違います。それは前からわかっていたことです。

正解は、3人いる首席ファゴット奏者のひとりである広幡敦子さんの乗り番であると判明したからです。それもご本人の tweet で知りました。

広幡さんはまだ20代の若いファゴット奏者。去年の3月まで広島交響楽団の首席ファゴット奏者でした。2年在籍したあと、引き抜かれて4月に東フィルに移籍。なんだかカープの丸選手みたいですね(笑)。東京交響楽団首席奏者の福士マリ子さんとともに、私がもっとも期待している若手ファゴット奏者です。

さて曲目はというと、前半がデュカスの「魔法使いの弟子」とザンドナーイの、「あるお伽話の印象『白雪姫』」。 後半はリムスキー=コルサコフのシェヘラザード。 おわかりでしょうか? ファゴットが大活躍のプログラムなのです。ですので、プログラムの表紙もファゴット。

デュカス: 魔法使いの弟子

ミッキーマウスの「ファンタジア」で有名なこの曲。そんなに深い内容の曲ではないので、あっさり流してしまうことが多いのですが、バッティストーニは違いました。こんなに構造的に書かれていたのか!と聞き手を唸らせる演奏。東フィルも彼が振ると別のオケですね。ピアニシモは綺麗だし、縦の線も合うし。この曲を聴いて感心したのは初めてでした。

ザンドナーイ: 「あるお伽話の印象『白雪姫』」

初めて聴きました。ザンドナーイはロシア人かと思いきやイタリア人だそうです。没年が1944年ですから、そんなに昔の人ではありませんね。5部構成で、それぞれに表題が付いているのですけれど、とりわけ描写的な作品ではありませんでした。まあまあ楽しく聴かせてもらいましたが。

リムスキー=コルサコフ: シェヘラザード

これは名演でした。やっぱり優れたオペラ指揮者が振ると臨場感が違いますね。あと、とにかく設計が見事。次はどうするか?と、ワクワクして聴きました。

第二楽章冒頭の広幡さんのソロは、ほんとうに素晴らしい。ニュアンスはバッティストーニの指示によるものと思いますが、すごく音楽的でした。さらに、音量も豊か。楚々とした細身のお嬢さんなのに、音はすごいです。クラリネット首席のべヴェラリさんがノリノリで仕掛けてくるのに、まったく引けを取らないのも立派でした。終演後、指揮者が真っ先に立たせたのは、もちろん広幡さんでした。ブラーヴァ!

ちょうど10日ほど前に、N響が同じ曲を演奏しているんですよね。指揮はこちらも俊秀の誉高い、トゥガン・ソヒエフ。こうなると比較は不可避ですが、ただベクトルは違うような気がします。(N響は放送で聴いただけですが…)

音から判断するに、N響のオーボエは茂木さん、ファゴットは水谷さんではないかと思います。オーボエはN響に軍配が上がりますが、ファゴットは広幡さんの方がよかったですね。コンマスはN響の方がかなり上ですね。(マロさん?)

オケについて

昔の東フィルは虎谷迦悦さんがオーボエ、井科さんがファゴットで、私にとって親しみのあるオケでした。 でも今は、オーボエの加瀬さん(日曜日は降り番でした)を除けばほとんど知らない方ばかり。

日曜日の演奏に関しては、お名前がわからないのですが、トランペットもホルンのトップも非常によかったです。出色だったのはもちろん広幡さんと、クラリネットのべヴェラリさん。このイタリア人のクラリネットはいいですね。

東フィル、悪くないじゃないかと思いましたが、さてこの好調が持続されるかどうか。来月はチョン・ミュンフンがマーラーの9番を振るので、これに行くかどうか思案中です。ただ、高いですからね。S S席だと1万5千円ですよ。この強気はどこから来るのか。裏目に出ないことを祈ります。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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