私が日本とアメリカの間を頻繁に往復していた1990年代、大植英次さんはアメリカのクラシック音楽の世界での Rising Star でした。2005年のバイロイトでの不評を境目として、ちょっと日本国内での活動が下火になった感があったのですが、読響への久しぶりの登場ということで、みなとみらいホールへ。
ひところの大植さんの勢いというのは、それはすごいものだったのですよ。彼がオケの常任指揮者だったエリー市に Eiji Oue Street が出来たり、彼の誕生日が市の休日になったり。ユナイテッド航空の機内誌に特集記事が組まれたこともありました。
エリー響での大成功をステップに、1995年にはミネソタ管の音楽監督に就任。このときもすごい人気でした。私は1997年の12月にミネアポリスのセント・ポール大聖堂で行われたメサイアの演奏会を聴きましたが、音楽そのものよりも大植さんが大ウケであることにびっくりした記憶があります。
さて、この日(6月23日)のプログラムはというと、前半がバーンスタインのディヴェルティメント、そしてパウエルのホルン協奏曲。ソリストは読響主席の日橋さん。後半はリムスキー=コルサコフのシェヘラザード。コンマスは小森谷さんでした。
パーンスタイン:ディベルティメント
あのウェストサイド・ストーリーを思わせる、陽気で派手な曲。これはもう大植さんの独壇場と言うべきで、オケをガンガン鳴らしていました。指揮台の上でのアクションも決まって、最後は大見得を切る感じ。これはこれで素晴らしい。
パウエル:ホルン協奏曲
私、パウエルという人を知らなかったのですが、没年が2007年ですから、ほんとに同時代の人ですよね。解説によれば:
協奏曲としては、このホルン協奏曲のほかにファゴット協奏曲やトランペット協奏曲を書いており、協奏作品のレパートリーが比較的少ない楽器に作品を提供しようと考えていたようだ。
とあります。いい人だったんでしょうか。
おそらく今の日本で最もホルンが上手な一人である日橋さんのソロに期待したのですが、結果は微妙なものとなりました。日橋さんの責任ではなく、問題は指揮者にあります。バランスが悪すぎる。オケを鳴らしすぎて、肝心のホルンが聴こえない部分があちこちに。これはダメでしょう。大植さんのショーマンシップが完全に裏目に出た感がありました。
リムスキー=コルサコフ:シェヘラザード
今年の1月には、バッティストーニの指揮による東フィルでの名演がありました。(その時の感想はこちらに)
バッティストーニは非常に劇場的な解釈でしたが、大植さんなスペクタクルな感じ。ガンガン鳴らします。この曲はそういう曲でもあるので、まあいいかなと。各首席奏者のソロを楽しむことができました。2楽章のファゴットのソロは吉田さん。素晴らしい。クラリネットの金子さんもブラヴォーでした。コンマスの小森谷さんのソロの音色の美しさも特筆ものでした。
やっぱり得意科目が大事?
大向こう受けを狙う派手な曲、というのは大植さんの世界ですよね。あらためて、2005年バイロイトでのトリスタンは荷が重かっただろうなと思います。もちろん、チャレンジしないという選択肢は無かったでしょうけれど。