マエストロ・コバケンが積み重ねてきた歳月を思う:小林研一郎傘寿記念演奏会第2夜

私が小林研一郎さん(以下、コバケン)の演奏を初めて聴いたのは高校一年生のとき。丹羽正明さんのFM番組での、演奏&インタビューでした。オケはハンガリー国立交響楽団。爾来、折に触れてコバケンの演奏に接すること45年。コバケンは傘寿を、私は還暦を迎えました。

コバケンは今や押しも押されもせぬ大家なのですが、「コバケン節」と時として揶揄される個性の強い解釈故に、私はいつも熱心な聴き手であったわけではありません。今回の傘寿記念の全5夜の演奏会についても、どうしようかと迷ったというのが正直なところ。でも結局はコバケンの到達点を確認したいという気持が強まり、通しのチケットを購入。昨夜(4月13日)が第二夜でした。

サントリーホールは美しく飾られていました。そして垂れ幕まで。

第一夜にももちろん行きましたが、このときの日フィルは最近の演奏水準を反映するものではなかったため、あえて言及することを避けようと思います。

ということで第二夜について。

曲目は前半がチャイコフスキーの交響曲第2番、後半が第5番。第5番は「コバケンのチャイコ5」で通るくらいの、彼の十八番中の十八番。

チャイコフスキー:交響曲第2番

この曲、私は実演は初めて。録音でも、2~3回聴いたことがある程度。1番よりも習作的な色合いが濃い曲であると思います。民謡的な旋律を題材にした、明るい曲。

コバケンは例によって全力投球でオケを鳴らすので、華やかな演奏にはなりましたが、かといって、そもそもが心を動かされるような曲ではなく管の首席奏者たちの熱演だけが印象に残る結果となりました。曲が曲だけに、仕方ないですよね。

チャイコフスキー:交響曲第5番

これは凄い演奏になりました。こうなることは予想していたのですが、その上を行く演奏。

「自家薬籠中の物とする」という表現がありますが、まさにそれ。最初から最後まで彫琢がほどこされ、「コバケン節」でない瞬間は全く無いという  とにかく感情の振幅が凄い。

吉田松陰ではありませんが、「かくすれば、かくなるものと知りながら」、感動へ持って行かれました。今回の5夜の中での白眉は、この曲になるのではないかと思います。

日フィル、大熱演

第2夜の日フィルは万全の布陣。敬称略で、コンマス木野、サブ千葉、チェロ菊池、ヴィオラはメーソン。フルートの真鍋さんは降りでしたが、代役は都響首席(で、元日フィル)の柳原、オーボエ杉原、クラ伊藤、ファゴット鈴木。ホルン信末、トランペットはクリストフォーリ、ティンパニはパケラ。

5番のホルンソロは信末さんの自己ベスト更新的な素晴らしさ。終演後、コバケンが真っ先に立たせてました。2番目に指名された鈴木さんもお見事。杉原さんも。オッタヴィアーノも。

若い管の奏者たちが名技を披露する一方で、弦のベテランたちがコバケンの意図を汲み、献身的に表現する姿勢には感動しました。コバケンと日フィルの絆の深さを、あらためて痛感。

コバケンは相変わらず走って登場。このぶんだと卒寿記念演奏会も大丈夫そうですね。

この記事を書いた人

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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