不思議な美しさで魅了するシベリウス〜九州交響楽団第373回定期演奏会

昨日は仕事で博多泊まり。「せっかくの博多。夜は美味しいものでも」というお誘いを無粋にも辞退して、九州交響楽団の演奏会へ。鈴木優人がシベリウスの6番を振るとなれば、聴き逃すことはできません。

はじめてアクロス福岡シンフォニーホールを訪れたのですが、ステージの広い、シューボックスタイプのホール。私の席は2階中央5列でしたが、適度な残響に恵まれた良いホールであるように感じました。

曲目は前半が武満の「夢の時」と、モーツアルトのホルン協奏曲第4番。後半はシベリウスの交響曲第6番とフィンランディア。

指揮は鈴木優人。このところ、とても評判がよいですよね。ナチュラル・ホルンの独奏はトゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールト。ナチュラルホルンの第一人者。

早く着いたら、プレ・コンサートがありました。まずズヴァールトさんがナチュラルホルンの演奏法について解説と、デモンストレーション。これが面白かった。そのあとモーツアルトのホルン5重奏曲から第一楽章。野趣に富んだ響きを堪能しました。

 

武満徹:夢の時

とりわけ印象に残るメロディーがあるわけではないのだけれど、しっとりした味わいの綺麗な曲。山田和樹&日本フィルで聴いて以来、2度目の実演でした。ヤマカズが巧みな計算を感じさせる秀演であったのに対して、昨夜の鈴木&九響はもっと自然な、曲自体から湧き上がってくるような音。私はこちらのほうが好きです。

 

モーツアルト:ホルン協奏曲第4番

ナチュラルホルンの超絶技巧に驚嘆しました。とにかくすごい。プレ・コンサートのときにズヴァールトさんが、「ナチュラルホルンで吹くと、音符ごとに音色が異なることになってしまう。モーツアルトはそれを知っていた上で、この曲を書いた。みなさんも今宵は18世紀の耳で聴いて楽しんでください」と言われていたのですが、まさにそんな感じ。ブラヴォーでした。

鈴木さん指揮の伴奏も、ぴったりホルンに寄り添って楽しい雰囲気。この曲の管の伴奏はオーボエ2本とホルン2本なのですが、伴奏ホルンもナチュラルホルンを採用して、独特の効果を引き出していました。

 

シベリウス:交響曲第6番

前世はフィンランド人だったのではないかと思うほどにシベリウスを愛する私。そのなかでも、とりわけ好んでいるのが、3、4、6番。

6番の冒頭。弦の序奏のあと、まるで夕暮れの湖から白鳥が飛び立つようなオーボエのソロが美しい。1983年のヘルシンキ・フィル100周年記念日本楽旅では、彼らの渾身の演奏に感動しました。(指揮はオッコ・カム。この演奏はCD化されています。)

ですが昨晩の演奏は、伝統的なシベリウス作品の演奏とは異なるベクトルのものでした。「らしく」響かないのです。だからといって「変な」演奏ではありません。この曲をやたらと聴きこんでいる私にとっても非常に新鮮な、不思議な響きを味わうことができました。九響がシベリウス演奏経験に乏しいことが却ってプラスに作用したのではないかと思います。これが日本フィルだったら、なかなか楽員の納得が得られなかったかもしれません。

昨夜の白眉は第3楽章でした。オーケストラは対向配置だったのですが、この効果は非常に大きかったと思います。

シベリウス:フィンランディア

上り坂の若いオーケストラのパワー全開でした。金管セクション、大健闘であったと思います。中間部の木管のアンサンブルの部分も、実に音楽的でした。これは後述しますが、クラリネット首席がうまいからです。

ただ私としては、1983年のヘルシンキ・フィルのアンコールで楽員が涙を流しながら演奏してくれたフィンランディアと、そしてラハティのシベリウス音楽祭での全曲ツィクルスの最後のフィンランディア(これもオッコ・カムの指揮でした。)を忘れることができません。ラハティで聴いたとき、隣席のフィンランド人の老婦人は、「この曲を聴くと、ほんとうに私たちは涙が出てきてしまうのよ」と言いながら、ハンカチを目に当てておられました。この曲は、そういう曲です。

 

オケについて

九州交響楽団、よいオケであると思いました。弦が綺麗です。そしてプログラムのメンバー表を見ると、まだ2管編成が組めないのですね。例えば、ファゴットは正規団員は埜口さんお一人。そのぶん、エキストラの人たちが「招待楽員」としてプログラムに名前が出ています。

今回のクラリネットの首席は、なんと山本正治先生!これには驚きました。もともとは新日本フィルの首席で、このあいだまで芸大の教授でいらしたはず。今回のプログラムではクラリネットの大きなソロは無かったのですが、前述のようにフィンランディア中間部の木管アンサンブルの部分で、オーボエとフルートを見事にサポートしておられました。九響の首席クラリネットは、以前のブログでご紹介したカスタム・ウィンズ五重奏団でクラリネットの妙技を披露していたタラス・デムチシンさんだったのですが、退団されてしまったとのことで、山本先生の招聘となったそうです。デムチシンさん、どこに行かれたのでしょうかね。

あと印象に残ったのはオーボエの佐藤太一さん。よかったです。

機会があれば、またこのオケを聴きたいと思いました。良い演奏会でありました。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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