このところ数年、日フィルの開幕を担うのは山田和樹。昔は山田一男先生と区別するために「新ヤマカズ」と呼ばれていましたが、もう「ヤマカズ」でよいですかね。毎年、攻めるプログラミングなのですが、今回も例年に引けをとりませんでした。
曲目は前半がショーソンの交響曲変ロ長調、後半が水野修孝の交響曲第4番。後半の曲はもちろんですが、前半のショーゾンも実演で聴くのは初めて。
ショーソン:交響曲変ロ長調
ポール・パレーとエドアルト・マータ(!)の音源を持ってはいるのですが、すみずみまで聴いたとは言えません(汗)。実質的には初めて聴いたようなものです。
これは先入観かもしれませんが、いかにもフランス的な洒落た曲でした。金管が華やかに使われて効果的。というか、そいう風にヤマカズが振ったというべきなのでしょうね。綺麗に交通整理してわかりやすく提示してくれます。このひとのこういう能力はすごいですよね。
いかにも「管の国」の作品で、私はたいへん気に入りました。タクトに応えた日フィルの木管陣もお見事でした。
水野修孝:交響曲第4番
恥ずかしながら、この作曲者のことは全く存じ上げませんでした。どうせ音源は無いのだろうとぶっつけ本番で聴いたのですが、プログラム記載の作曲者のコメントによれば、初演時のCDがあるのだそうです。失礼しました。
映画音楽の世界で実績がある方とのことで、とても綺麗な曲でした。第四楽章になるとエレキ・ギターやドラムが入って華やかで面白いのですが、この曲の真価は第二楽章にあるように思いました。美しい。
休憩時間にステージ上でフルート首席の真鍋さんとオーボエ首席の杉原さんが、なんとも綺麗な旋律を合わせていて、これは!と期待していたのですが、本番ではその部分で弦楽器がかなりの音量で鳴っていて、管はほとんど聴こえないのことにがっかり。ヤマカズにしてこれですから、映画音楽のように綺麗に流れているわりに、案外複雑なスコアであるのかもしれません。
でも、とても楽しみました。よい曲であると思います。
オーケストラについて
定期演奏会開幕戦とあって、首席奏者のみなさんはほぼ全乗り。おやすみだったのはホルンの信末さん、弦バスの高山さん、ティンパニのパケラさんぐらい。(数日前に「惑星」を演ってましたから、その関係ですかね。)
フルート真鍋、オーボエ杉原、クラリネット伊藤、ファゴット鈴木(敬称略)のアンサンブルはほんとうに素晴らしい。アングレの佐竹さんのソロもとても美しいものでした。ショーソンでのクリストフォーリさん(Tp)の鳴りっぷりも洒脱で良かった。
マネジメントについて
在京オケの中で、いや、日本のオケの中で、最も経営能力が高いのはおそらく日フィルでしょう。カーチュン・ウォンの首席客演指揮者就任はまさに快挙でしたし、それに加えて広上さんの芸術顧問就任も発表されました。そして何よりも昨年、コロナ禍の下で4億円の赤字見込みを跳ね返し、なんとかトントンに持っていったのは素晴らしい。支援者としても頑張らないといけないな、と開幕戦に臨んで思いました。
素晴らしい演奏会でした。感謝です。