2005年に始まった夏の祭典、フェスタサマーミューザ。2011年の大地震によるホールの損壊、そして昨年のコロナ禍という危機を見事に乗り越えて、首都圏の夏のイヴェントとして定着しましたね。関係者の方々のご努力には頭が下がります。今年のフィナーレは8月9日。そう、あの閉会式の翌日だったのですよね。あちらには「イマイチ」感が漂っていたのに対し、こちらは創意工夫の成果が輝いていました。
オーケストラはホストである東京交響楽団。指揮は正指揮者の原田慶太楼。とても意欲的なプログラムで、前半がヴェルディの「アイーダ」から凱旋行進曲とバレエ音楽。そして、かわさき=ドレイク・ミュージックアンサンブルによる、「かわさき組曲~アイーダによる」(世界初演)。 後半に入って、ジョン・アダムズの Absolute Jest 、そして吉松隆 の交響曲第2番「地球(テラ)にて」。 なんとも盛り沢山ですね。
ヴェルディ:「アイーダ」から、凱旋行進曲とバレエ音楽
祝祭気分満点の演奏。原田さん、豪快にオケを鳴らします。東響のブラス・セクション、お見事でした。日本のオケ、ほんとうに上手くなりました。聴いていて、なんの不安もありません。素晴らしい。
唯一、不満が残ったのは、ズンチャ、ズンチャという裏打ちの扱い。ここを微妙にズラして雰囲気を出すのがヴェルディというものではないの? と思った次第です。
かわさき=ドレイク・ミュージックアンサンブル:「かわさき組曲~アイーダによる」(世界初演)
イギリスの音楽団体と川崎のハンディキャップを持った人々の団体とのコラボでつくられた曲。東響のメンバーもボランティアとして参加されておられます。
この曲、期待以上におもしろいものでした。正直言って、この後のジョン・アダムスの曲よりも私は好きです。素晴らしい試みであると思いました。
ジョン・アダムズ:Absolute Jest
カルテット・アマービレがソリストとして参加。ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」にインスパイアされた曲とのことですが、私の趣味からすると冗長というか、ちょっとくどくて、面白く思えませんでした。(あくまでも個人の感想です。)
一方、カルテット・アマービレの技巧は凄い。ほれぼれしました。
吉松隆:交響曲第2番「地球(テラ)にて」
個人的にはこの曲が今回のメイン。期待は裏切られず、素晴らしい演奏でした。この曲の真価を明らかにした名演といってよいと思います。ぜひCD化していただきたい。
全4楽章、それぞれにとても美しかったのですが、第一楽章でチェロのトップとフォアシュピーラーのソロに続いて弦バスが薩摩琵琶的に強いピチカートを決める場面には痺れました。第3楽章もよかったけれど、白眉は多彩な要素が盛り込まれている第1楽章であったように思います。見事に表現し切った東響の凄さ。
ちょっと残念だったのは、メリハリをくっきりつける意図はわかるのだけど、中間的な音量の場面で単調であったこと。もっといろいろと書き込まれているはず。今日は、わかりやすさを重視したのかな。この曲が市民権を得ていけば、そんなあたりに光をあてる解釈も出てくることかと思います。
オーケストラについて
フルート相澤さん、オーボエ荒木さん、クラリネット吉野さん、ファゴット福井さん。荒木さんは歌いに歌って素晴らしい。吉野さんも果敢な演奏。コールアングレは、われらが日フィルの佐竹さんでした。
コンマスは水谷さん。いやいや、素晴らしすぎる。吉松さんの第四楽章では、ほとんどゴスペラーズ的なノリでオケを引っ張ってました。この人あっての東響であることを痛感。
フィナーレにふさわしい、素晴らしい演奏会でした。こっちの「閉会式」は誰もが認める大成功でした。