清冽な河村さんのシューマン!:日本フィルハーモニー交響楽団第366回横浜定期演奏会

どの作曲家の音楽を「ドイツ的」と感じるかは、それぞれの人が抱く「ドイツ」のイメージによって異なることと思いますが、私がとても「ドイツ的」であると感じるのはベートーヴェンでもワーグナーでもなく、シューマンです。我ながら理由はわからないのですが、非常に惹かれます。もしかするとサヴァリッシュの影響かもしれませんが。

さてそのシューマンのピアノ協奏曲を河村尚子さんが弾き、しかも指揮はラザレフということで私はとても楽しみにしておりました。河村さん&ラザレフ将軍といえば昨年の日フィルの九州ツアーで1日だけブラームスの交響曲1番とピアノ協奏曲2番というプログラムの日があり、私はそのために大分へと飛んだのでした。(そのときの様子はこちら

しかし好事魔多しで、ラザレフの入国を認めてもらうのに手間取った結果、昨日(4月16日)は隔離期間中となってしまい、沼尻さんが代役となりました。それはそれで興味があるので、足元が悪い中、神奈川県民ホールへ。(いま、みなとみらいホールが改修工事中なのです。)

曲目は前半がシューマンのピアノ協奏曲、後半がショスタコーヴィッチの交響曲第5番

シューマン:ピアノ協奏曲

もともと清冽な曲なのだけど、河村さんが弾くと一層その感が強まりますね。お見事。シューマンの詩情、って言ってしまうと恥ずかしくらいに陳腐なのですが、でもそんな感じ。素晴らしい。なかなかこういう演奏は聴けません。河村さんは帰国後の待機期間の間、ホテルに缶詰めでピアノを触ることができなかったとのことですが、そんなことを感じさせない演奏でした。Brava !

沼尻さんは丁寧にサポートする指揮。オケも真鍋さんのフルート、杉原さんのオーボエとピアノの絡みは秀逸でした。

ただ、私の席が悪すぎた。ただでさえ県民ホールなのに加えて、1階15列中央あたりだとピアノとオケの音がバラけて聴こえてしまいます。しばらくの間みなとみらいホールで聴けないのは致命的かも。

ショスタコーヴィッチ:交響曲第5番

最近の沼尻さんはショスタコに積極的に取り組んでおられるようなのですが、昨日の5番も緻密な解釈で、私は好感を持ちました。この曲、佐渡さん的に勢いで演奏されるのは私は苦手です。

当然、第3楽章が白眉となりました。室内楽的、といっていいくらいの演奏。ただ、先ほども述べましたが、ホールがねぇ… 

ただ、日フィルでこの曲となるとラザレフとの対比は不可避で、そうなると、沼尻さんをもってしても分が悪いのは否めません。 あの「切れば血が出る」感じは、ソヴィエトでの経験によるものなのかどうなのか。ちょっと追従を許さないですよね。

あまりこういうことを言いたくはないけれど、残念だったのは、周囲におられた高齢者の方々の集中力の欠如。パンフは落とすわ、ピアニシモで盛大に咳をするわ、ちょっと信じられない状況でした。もうちょっと、ちゃんとしてほしいと切実に思った次第です。

オケについて

敬称略で、コンマス木野、フルート真鍋、オーボエ杉原、クラ伊藤、ファゴット田吉、ホルン丸山、ペットはクリストフォーリ。木管陣は安定のアンサンブル。ヴィオラは安達さんとデイヴィッドの首席2人が並びで、よく聴こえるし音もいい。

ホールはちょっと

いっそのことオケをピットに入れて、少し沈めたらどうかと思いましたよ。ここは確かピットを上下できる筈。遠い昔、二期会のボリス・ゴドノフをここで演った際にゲネプロを聴かせてもらったのですが、あのとき小澤さんは途中でピットを下げてました。そんな手があるのか、とびっくりしましたが。

このプログラムはサントリーで聴くべきでした… 失敗。

この記事を書いた人

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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