若手ホルン奏者の首席デビュー:日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会

コロナ禍の焼け野原から各オーケストラが復興するなかで、日フィルは特別演奏会を三連打。前半2回は都合がつかず、最終回のみ聴きに行きました。休憩なしの短縮バージョン。指揮は広上淳一さんで、曲目はベートーヴェンのエグモント序曲と交響曲第5番という、鉄板なプログラム。

ベートーヴェン:エグモント序曲

やや早めのテンポ。重厚というよりも軽快な音作り。でも広上さんの常として構築感がしっかりしているので、軽い感じにはなりません。管が良く聞こえる。駆け抜けるような、爽快な演奏でした。今さら気がついたのですが、この曲フルートは1本なんですね。

ベートーヴェン:交響曲第5番

名演でした。実は広上さんのベートーヴェンは、良いんですよね。若き日の日フィルとの7番の録音は素晴らしいものです。たしか1992年だったと思うのですが、やはり日フィルとベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(ソロは徳永さん)と6番という演奏会があって、これもとても良かった。埼玉の航空公園までわざわざ聴きに行った甲斐がありました。

今日の演奏はオケをドライヴするのではなく、オケから湧き上がってくる音楽を迸らせ、ときには手を突っ込んで噴き上げさせるという趣きでした。ここでもエグモント序曲と同様に管を鳴らします。1番ホルン、すごくよかった(後述します)。

今日のコントラファゴットは名手木村さん。私の席がRB3ー8であったこともあるのですが、よく聞こえて、そして素晴らしく音楽的でした。前述の1992年の演奏会では木村さんは首席ファゴットで、ベートーヴェンのコンチェルトの第三楽章のソロが実に見事で、終演後にソリストの徳永さんが木村さんを指名して立たせていたことを思い出しました。

グリーグ:ホルベルク組曲より”サラバンド”(アンコール)

北欧ものでの日フィルの弦楽合奏はさすがのひとこと。渡邉暁雄先生以来の伝統ですよね。欲をいえばシベリウスのラカスタヴァあたりをやってほしかったのですが、でもさすがに広上さんとしてはちょっと遠慮があったのか

オケについて

敬称略で、フルート真鍋、オーボエ杉原、クラリネット伊藤、ファゴット鈴木。このアンサンブルの緊密さは、私見では東響に次ぐものかと思います。特筆すべきは、今日初めてホルンのトップを吹いた、新人の信末さん。攻めの姿勢で朗々と吹き、大ブラヴォーでした。

彼の3番奏者としてのデビューは2月の日フィルの九州公演。このときは師匠の日高さんが客演首席で、「先生と吹けるなんて、大感激でした」と語っていた彼が、今日はトップ。日フィルは福川(現N響)、日橋(現読響)という日本を代表するホルン奏者を輩出し、理事長の平井さんが「首席ホルン養成所」を自虐ギャグをかますくらいなのですが、信末さんもその系譜を継ぐことになるでしょう。今日はその首席としてのデビューでした(できれば移籍しないでね。)

よい演奏会でした。感謝。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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