おそらく在京好楽家の多くがイザベル・ファウストを聴くために池袋に集結した土曜日の午後、私はサン=サーンスの交響曲第2番という珍しい曲に魅かれて関内ホールへ。とんでもなく天邪鬼な行動をとってしまいました… 神奈フィルの音楽堂シリーズというコンサートです。
曲目はモーツアルトの交響曲第31番「パリ」、そしてピアノ協奏曲第15番。ソリストは小林愛美さん。後半はサン=サーンスの交響曲第2番。指揮は田中祐子さん。関内ホール(大ホール)は私ははじめて。定員1000人くらいの小ぶりなホールでした。
モーツアルト:交響曲第31番「パリ」
もともと陽気(特に出だしが)な曲ですが、ちょっとうるさい演奏になってしまったのではないでしょうか。田中祐子さん、快速テンポでくっきり強弱をつけていくのは若々しくて良いのだけれど、最初から最後まで同じ感じだとつまらないし、ちょっと細かく振りすぎではないかと。(あくまで個人の感想です)
モーツアルト:ピアノ協奏曲第15番
ソリストの小林愛美さんは、ほんとうに「綺麗なお嬢さん」、といった感じの人。25歳。まだカーティス音楽院に在学中なのですね。若きモーツアルトの作品の中に繊細さを見出して表現するという意図であったように感じました。
ただ、そのソリストの意図を指揮者が十分にサポートしていたかというと、ちょっと疑問が。ここでも元気が良すぎる。むしろ管の首席奏者たち、フルートの江川さん、オーボエの古山さんがソリストの意図を汲んで、対話していたと思います。
サン=サーンス:交響曲第2番
第3番「オルガン付き」は圧倒的に有名ですが、サン=サーンスは交響曲を全部で5曲、遺しています。番号の無いもの2曲と、1~3番。ただ、実質的には3番を除く4曲は習作と言っても良いかと。この日演奏された第2番も、25歳のときの作品です。
20分ちょっとの曲ですが、ちゃんと4楽章あります。作曲年代ではブラームスの1番よりも前のものですが、聴いた感じはもっと新しい。ただ、この曲を書いた時点でサン=サーンスはオーケストラの楽器の実務というか演奏実態に詳しくなかったのではと思われる点が随所にあります。端的にいうと、「難しいんだけど、報われない」感が満載なのでは。とくに木管群。
一方、指揮者にとっては捌き甲斐のある曲。田中祐子さんには合っているかと思います。生き生きと振っておられました。(だからこそプログラムにのせたのでしょうけれど。)
しかしですね、この曲にはジャン・マルティノンが遺した録音があって、これがいかにも彼らしく「粋」なのですよ。木管を単に合わせるだけではもちろんなくて、重ね方で雰囲気を出してます。さすが巨匠ですね。この辺りに今後どれくらい迫ることができるのか、この指揮者を見守りたいと思いました。
オケについて
神奈フィル、ここ10年くらいでうまくなりましたよね。この日の木管群、素晴らしかったです。