語学の愉しみ

このあいだ同年輩らしきおじさんと電車で隣り合わせたのですが、彼はひたすら美少女系(?)のゲームに没頭しておられました。

人の趣味はいろいろだなと感心したのですが、私がそのとき取り組んでいたのはブラジル・ポルトガル語の文法問題集。第三者からみれば、彼も私も「変なおじさん」ですよね。(笑)。

大学書林という、各国の語学書を専門に出版している本屋さんがあります。ここの人に伺ったことがあるのですが、どんなにマイナーな言語の本を出しても、500冊程度は売れるのだそうです。たとえば、ヒマラヤの小国であるブータンのゾンカ語あたりでも。

もちろん大学図書館とかが買ってくれているというのはあるのでしょうけれど、どうやら語学マニアともいうべき人々が存在し、需要を支えているのではないかという話でした。

これは私としては納得できる話です。 なぜなら、私もそのひとりだからです。

そんな語学マニアとして約40年すごしてきて思うのは、語学の愉しみには2つある、ということです。

ひとつは原書を読む愉しみ。ドイツ語、フランス語あたりだと読みたい本は山のようにありますし、美酒を片手に優れた翻訳を参照しながら読むという、至福の時をすごすこともできます。

もうひとつは、いわゆる少数言語の場合がそうなのですが、その国に行く前に初級文法書を勉強して、現地での滞在を楽しむというやりかた。 私はこちらにもハマっていて、いままでにフィン語、インドネシア語、トルコ語、現代ヘブライ語を学んできました。

ときには本当にびっくりするようなことが。

エルサレムのホテルの売店で、ヘブライ語の練習を兼ねて買い物をしていたときのことです。

お店のおばさんがお釣りのお札を数えていくのですけれど、それが “yksi, kaksi, kolme…”

そう、フィン語なんです。「え、フィンランドのご出身ですか?」とたずねたら、彼女がびっくりしたのなんの。

彼女はイスラエル建国にともなう帰還運動でフィンランドからやってきたユダヤ人だったのです。

「まさかエルサレムで日本人とフィン語で話すなんてねぇ。あなたはフィンランドが好きなの?」

「Totta kai. (もちろんですよ)」

「ああ、Totta kai なんて聞いたのは、何十年ぶりかしら」

結局、おまけしてもらいました(笑)。

こんなことを書くと、いかにも私に語学の才能があるように誤解される向きがあるといけないので断言しますが、ありません。 フィン語も、たどたどしい域を出ていません。 でも、何よりもマニアなんですよね。

 

さてタイトルの下の写真はフィン語の聖書です。 Vanha Testamentti が旧約、Uusi Testamentti が新約です。

この記事を書いた人

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元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して17周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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