蔵書を5000冊自炊(電子化)して思うこと

2016年10月に思い立って蔵書の自炊(電子化)を始めて3年8ヶ月。ついに5000冊に到達しました。単純計算でひと月あたり113冊。一日あたりだと4冊弱。始めた時にはもうちょっと捗るかと予想していたのですが、なかなか思うようにはいきません。とはいえ、5000という数字は良い区切りなので、振り返って「気づき」をまとめてみました。これから自炊に着手する方にとって参考になればよいのですが。

はじめた理由(わけ)

ひとつは本が増え過ぎたこと。庭に物置を2つ建て、それでもまったく足りずに隣の隣の家を借りました。これではいけないと恐怖を抱いたのがすべての始まりです。

もうひとつの理由は、本を持ち運ぶにあたっての不自由さです。2011年に1週間にわたって客船に乗る機会を得たとき、悩みは持ち込める本の量が限られることでした。あたりまえですが、本は重いし、かさばります。しかも、じっくり読みたいと思う本ほど、厚いものが多いという皮肉。なんとかしたいと痛切に思いました。

自炊の方法

いろいろな流儀があるようです。 私の場合は大型の卓上カッターで裁断し、スキャンスナップでpdf化しています。外付けストレージにバックアップをとった後、Evernote に保存します。

普通に読むときにはEvernote を起動し、i-Padで読みます。アンダーラインしたり、コメントしたいときには アップル付属のアプリのBook にコピーして、i-Pencil を使って書き込みます。i-Pencil が進化して、違和感なくできるようになったのは嬉しい。以前はここがネックでした。 (自炊の具体的な方法については、3400冊を達成した際のブログに書いていますので、よろしければご覧ください。)

よかったこと(1)~スペースの解放

本棚ひとつでだいたい200冊収納できるとされていますから、今までの努力により25棹分のスペースを解放したことになります。まだあと2000冊は優に残っているのですが、そのすべてを電子化しなければならないわけではありません。もうちょっとペースを上げて頑張れば、来年には借りている家を返却できる見通しがつきました。

書斎兼仕事部屋および寝室から背高の本棚を一掃できたことは防災上もよかったと思っています。いかに愛書家とはいえ、地震のときに本で圧死したくはありませんから。

よかったこと(2)~検索のスピード感

pdf化の際に単語検索ができるように設定してあるため、キーワードで全蔵書を検索できます。これは感動的です。「あの話、どこに書いてあったんだっけ」と悩みながら蔵書を出したり引っ込めたりという手間から劇的に解放されました。

よかったこと(3)~本の劣化防止

とくに洋書は痛みが早い。紙質が悪いからでしょうか。でも電子化してしまえば、現時点よりも劣化することはありません。

スキャンする際の輝度を調整することによって、黄ばんだ本を白く保存することもできます。

よかったこと(4)~埃や紙魚からの解放

結果、家内に叱られる頻度が減りました。ここは、とても大切です。

よかったこと(5)〜老眼対応

細かい活字でびっしり印刷された本を読むのはだんだんしんどくなってきているのですが、i-Pad で拡大して読めるのは助かります。ヘブライ語のような句読のための記号(漢文の返り点のようなもの)が付いている言語の場合には、とくに威力を発揮します。

残念なこと(1)~本の手触り、インクの香りが失われる

こればっかりは仕方ないことなのですが、でも残念。紙の本として読み、読み終わって電子化するのが対策なのですが、それでも本への愛着は減衰するのは避けがたい。それと、昔読んだ本の内容と香りの記憶がリンクしていることがあるのですが、それも失われてしまうのですよね。

残念なこと(2)~再流通サイクルを切断してしまう

紙の本としての命を絶ってしまいますからね。古本屋さんに引き取ってもらって、それを誰かが読むということはなくなるわけです。ですので、本当に貴重な学術書は電子化せず、いずれは手放そうかと思っています。もちろん稀覯本などは持っていないのですが、学者になり損ねた者として、何冊かの入手困難な専門書はいまだに手元にありますので。

残念なこと(3)~一覧性が失われる

資料を何冊か同時に広げるということが難しくなります。ただ、これはi-Padをいくつか使えば解決可能ではあります。私は3つ持つことになってしまいました。

 

こうして書き並べてみると、私にとっては電子化のメリットは「残念なこと」を償って余りあるということに気づかされます。手間はかかるけど、着手してよかったと心から思います。

最後に、うまく進めるティップスをご披露します。3400冊のときのブログと重複する部分もありますが、ご容赦ください。

 

ティップス(1)~道具にお金を惜しまないこと

カッターの性能は決定的に重要です。最初の20冊くらいまでは大判カッターナイフで裁断していましたが、時間はかかるし肩は凝るし、良いことはひとつもありません。

スキャナーは Scansnap 以外には考えられません。それなりに速い(秒速2ページくらい)上に、実に丈夫で壊れません。さすが日本製品。

ティップス(2)~Evernote Notebook 機能を活用する

Notebook はフォルダのようなものです。自分なりのジャンル分けに従ってフォルダをつくり、それに本を入れていきます。そうしないと、3000冊を超えたあたりから本を探しにくくなってきます。もちろん検索できるのですが、キーワードによってはヒットする本がやたら多くなる場合もあるので。Notebook は200まで設定できるとのことですので、十分かと思います。私が設定しているのは50くらいです。

ティップス(3)~ナンバリングする

これは自分の励みのためです。私の場合、ナンバー、書名、著者名の3つをpdfのタイトルに入れています。区切りの良いナンバーのときは、自分にとって意義のある本を選びます。子供のような話ですが、そうすると達成感が得られます。孤独な作業を進めるにあたっては、達成感は大切です(笑)。

記念すべき5000冊目

Cixin Liu The Three-Body Problem を選びました。「三体」というタイトルで翻訳が出ています。この本の評判はすごいですよね。三部作の第一作。英語ではとっくに3冊が完結しているのですが、翻訳が揃うのはいつになることやら。ということで原書で3冊揃えました。であれば、最初から原書で読む方がよいですよね。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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