「女性のマネジメント」について、本を読みながらあれこれ考えてみた。

ほんとうは「異性のマネジメント」について考えたいのですが、女性側の視点で男性マネジメントについて語った本はほとんど無いというのが現状なので、「女性のマネジメント」をテーマにしました。「男性マネジメント」については、優れた女性に語っていただくべきかと。

そして、プライベートの場での女性のマネジメントについて語ることは私の能力を遥かに超えますので(私はマネージされている側ですし)、あくまでも仕事における関係に話題を絞ります。

 

さてどんな本を選んだか

考えるにあたって、題材として次の4冊を選びました。

  • 「人生 負け勝ち」 柳本晶一著 幻冬社
  • 「女心をつかんで動かすー伸びる女はこうして見抜け」 野田義治著 PHP社
  • 「東横インの経営術―女性のセンスを活かして日本一のホテルチェーンを作る」 西田憲正著 日本評論社
  • 「女性が会社を作るとき」 今野由梨、大河原愛子著 東洋経済

 

著者の方々のプロフィール

選んだ本の著者の方々について少し御説明しましょう。

柳本晶一さんは元全日本女子バレーボールの監督です。 低迷していた女子バレーを再建し、アテネオリンピック出場にまで持ち込んで絶賛された方。

野田義治さんは巨乳タレントが売り物の芸能プロ、イエローキャブの社長でした。 内紛劇の挙句に社長を解任されましたが、主なタレントが野田さんについていくことを表明し、却って評価が高まった人です。

西田憲正さんは東横インの元社長です。ちょっと晩節を汚された感がありますね。
このホテルチェーンでは支配人以下、現場の従業員が全員女性であることが特色。 ちなみに創業の地が蒲田であり、東京と横浜の中間であることから東横インと名づけたとのことで、東急電鉄の間に資本関係はありません。

今野由梨さんと大河原愛子さんは百戦錬磨の女性起業家です。

さて、本論に入りましょう。 いくつかの論点について考えてみたいと思います。

1対1の関係において、部下として男性をマネージするのと女性をマネージするのに差はあるのか

この点については、基本的には「差がない」、あるいは「差をつけてはいけない」というのが答えであるようです。 野田さんによれば:

ビジネスの世界に入った時点から、男性と女性は対等にやりあうもの。 そして女性をただおだてるのではなく、怒るときは怒ってこそ、相手を人間として尊敬することになるのです。

この点については、西田さんもまったく同じ意見です

ひとつの結論は、彼女たちを「女性」として扱わないということだろうか。 男であろうが女であろうが、私は接し方を変えない。

では男性の上司は女性を深く理解しなければならないのか

部下として女性をマネージする際に、相手を完全に理解する必要があるのかと言えば、どうやら、そんな必要はなさそうです。

野田さんのように女性タレントをマネージすることが仕事である方であっても

正直、女性のことなんか、全然わかりません。 それも当たり前です。 私は男、むこうは女、性が違うのだから分かるはずがありません。

とおっしゃっているのですから。 良く考えてみれば、当然ですよね。 同じ男性の部下でも、何を考えているのかよくわからない場合のほうが多いわけですから。

だとすれば、押さえるべきポイントは何か

「信頼して、対等な存在として接する」ということであるようです。 現在の日本のビジネス社会では、残念ながら必ずしもそうではないからです。

再び野田さんの言葉を借りると

女性は対等に扱われていると感じることで、責任感も生じます。

女性の心をつかむ、動かすというと、何か無理やり言うことをきかせたり、小手先で気を引かせるということを想像してしまいがちです。

しかし実際には一人の人間として、「お前のことを必要としている」 「お前のことを大切に考えている」 と信頼感を与えてこそ、女性の心は開き、その心をつかむことができるのです。

ほんとうは、ここで言われていることに男女差は無いはずです。 でも現実にはなかなかそうなってはいないので、特に留意する必要があるということでしょうね。

かといって男性と女性は同じではない

ところで、この三人の方々は、男性と女性のマネジメントに差がないからといって、性差までを否定しているわけではありません。

このあたりは、単純なジェンダーフリー論者と異なり、互いに相対優位性があることは十分に認めています。 たとえば野田さんによれば

私は女性は男性よりも、根気強い、粘り強い、と思っています。

ということですし、柳本監督によれば

男子は理論で押せるが、女子はイメージでくる。 男子は直接階段式に伸び、女子は螺旋を辿るように成長する。 だから、時間がかかる。

でも女子のほうが賢い。 理解すれば、チームが強くなるのは早かった。 女子は意識が高い分、プライドは半端ではなかった。

男子は集中したら、そればかりをやらないと気がすまないけれど、女子はひとつのことをやりながらでもほかのいろいろなことに気を配っている。

たとえば、選手がレシーブ練習でへとへとになるとする。 コートの横で「はあはあ」とへたっている。 でも、体育館のカーテンが開いていたら、女性は「あっ、開いていた」と立ち上がって閉めにいく。 男子選手なら、正真正銘立ち上がれない。 では、それまでの練習で手を抜いていたのかと思うと、女子は違う。 死んでも死なない。 どこかに余裕がある。』

ということになるわけです。 西田さんも面白い指摘をしています。

概して女性は原則的である。 これは女性ならではの特質だ。 だから女性は「お客様第一」という原則があればそれにしたがって行動していく。 しかるに男性はどうしても地位や年齢の上の人に弱い。

うーむ、耳が痛いですね。

さて、ここまでの議論をまとめると、基本的には男女の分け隔てなく対等に接し、しかし男女では得意分野が違うことを理解する、ということになります。

では、その女性の強みを引き出すためには?

再び柳本監督の意見を聞いてみることにしましょう。

女子選手とは、いかにコミュニケーションをとるかということに尽きる。

3日か4日知らん顔をしていると、その選手は、死ぬ。 特に女の子は。 完全にモチベーションが落ちる。 彼女たちはコミュニケーションの世界に生きているから。

どうやらその背景には、女性は男性よりも、「人を見る」ということがあるようです。

柳本監督によれば

女子選手はとくに指導者という「人」を見る。 人についていく。 自分を育ててくれた人についていこうとするのだ。

たしかにそうかもしれません。 地位や年齢に左右されがちな男性に比べると、より本質的なのかもしれません。

では、この「コミュニケーションをとる」ということの他に、重要なポイントがあるのでしょうか? いろいろと読んで考えてみたのですが、どうやら、「無い」というのが答えであるようです。

逆に言えば、それだけ非常に重要であるということになりますね。

では具体的はどうすのか?

あとはHow論になりますが、これは相当に奥が深いようなので、本を一冊紹介することで勘弁していただくことにしたいと思います。 それは;

後藤芳徳著 『オンナを味方にして仕事をする本』 成甲書房

です。 この本は約200ページあるのですが、その大半を費やしてHow論が述べられています。著者は風俗業界で成功した若い実業家です。 人脈論についての著書もあります。 ただし、私はこの人の基本的なスタンスには賛同しないのですけれど。

 

さらに一歩進んで、どうすれば女性の集団をマネージできるのか

できることなら、自分がそういう立場に至りたくないというのが私の本音ですが、まずは考えてみましょう。

どうやら、男性の集団をマネージするのとは大きく異なるらしいのです。 柳本監督でさえ、このようにこぼしているくらいなのですから。

女性は12人いたら絶対にうまくいかない。

半分の6人をこてんぱんに叱ったとする。 残りの6人には何もトラブルはない。 本当は、問題などないはずだが、叱られなかった6人は、驚くようなアピールをする。

「私たちはもう必要ないんですか」とか。

「わかった、なら今度はこっち行くで」と、こっちばかりを見ていると、「なんであの子ばかり」となる。 女性を指導するのは、こんなことの連続だ。

12人というのは、日本代表チームの定員数なので、この数字に特有の意味があるわけではありませんが、言わんとされていることはわかりますよね。

これは男性であるが故のぼやきというわけではなさそうです。

優れた女性経営者である今野さんでさえ、ご自身の会社で苦労されてきたようですから。

日本社会に巣食っているウェットな関係というものに、女性特有のべたべたした関係が加わって、職場としてのルールとか規律、モラル、礼儀というものが見失われそうになってしまったのです。

世間からも、「今野さん、女同士って大変でしょう」ってずいぶん言われまして、本当に考え込んでしまいました。

この難しさの原因は「嫉妬」であるというのが柳本監督の意見です。

特に女性の場合、もめているときは、必ず焼きもちが原因だと言って間違いない。

この特性を利用してマネージするという方法もあるわけで、それで成功しているのが東横インでしょう。

西田さんは「嫉妬」を「負けず嫌い」と前向きに再定義した上で、それを経営のシステムに組み込んでいます。 東横インのホテル支配人は全員が女性であることを頭に置いて、以下を読んでみてください。

東横インでは、稼働率が75%を下回った店舗の支配人は、「稼働率向上実行委員会」という委員会に強制的に入会させられる。 当然、誰もがこの委員会に入りたくない。 入会した支配人はいち早く脱会するために、入会していない支配人も絶対に入会しないために、努力する。 仮に入ったからといって、罰則はない。 ただ、みっともないだけである。

月に一度、全国の支配人が一堂に集まる「支配人会議」では、各ホテルの売上や利益、稼働率などが全て公表される。 ここで成績の悪い支配人は、自分の名札が「赤札」となる。 計画を達成していれば「白札」となる。 「赤札」となっても罰則はない。 やはり格好悪いだけである。

 

男性だと、「みっともなさ」に安住してしまうケースがあるけれど、女性の場合には、これが一番効く、ということであるようです。

「嫉妬」あるいは「負けず嫌い」を利用してマネジメントするに際しては、こんな工夫も必要になってきます。

能力給はない。 能力給によって給料に格差をつけると女性の場合、燃え尽きてしまう危険性があるからだ。 あまりにも一生懸命やりすぎて、「もう支配人なんてうんざり」では、そのホテルにとって大きな損失だ。

なるほど、という感じですよね。 このようなテクニックを用いて男性が女性の集団をマネージするのは、それでもやはり大変なことです。 ここで割り切ってしまうのが、柳本監督の考えです。

女子には女子にしかわからない部分がある。 ある時期から選手に任せるようにしたが、放任はいけない。 自由を与えるには芯がなければいけない。 女子には同性のボスが必要だ。 私の考えを、女子なりの目線で伝えてもらうためだ。

女子には女子だ。 男には、女子のことはよくわからないと思っていたほうがいい。 理解している時間もない。 そういう意味では、女性同士のほうが、能力を活かせると思う。

かつての女子バレーボールの監督は、選手を24時間、管理下において、私生活まで把握するのが普通だったが、私は原則として、合宿では食事を一緒にしない。 夜のミーティングにも出ない。 吉原のリードに任せた。

吉原というのは、キャプテンである吉原選手のことです。 つまりは、間接統治ということですね。 自分の考えを伝えるにあたって、本当に信頼できる女性を選んで、リーダーとして配置する、ということでしょうか。

西田社長も、ベテランの支配人を集めて「パトロール委員会」を作り、つぎのような役割を担わせているとのことです。

パトロール委員会の委員はもちろん支配人だ。 一ヶ月に一度、定期的に対象となる店舗を回り、運営状況を確認する。 「客室やフロントの清掃は行き届いているか」「スタッフの仕事状況はどうか」など、200におよぶ項目を、二日にわたってチェックしていく。

女性同士のチェックだから、男では気づかないこと、いいにくいこともズバズバと指摘する。 「フロントさんの化粧がよくない」なんてことにすぐ気づく男は少ない。 気づいても、なかなか指摘することができないだろう。

ここまで議論してきてこう言うのもなんですが、もしかすると男性が女性の集団をうまくマネジメントするなんて、諦めたほうが良いのかもしれません。西田さんは、次のような結論に到達されたそうですから。

私の経験から言うと、もともと女性は管理されるのが嫌いだ。 だから、上から命令を押し付けられると、途端にやる気をなくす。 自分たちで問題点を探りあい、改善していくほうが、明らかに士気が高まるのだ。

そうですね。 では女性経営者である今野さんは自分の会社で生じた問題をどのようにして解決されたのかを御紹介して、この小文を終えたいと思います。

私は社内に呼びかけたのです。 「私たちはこれから女性の時代をつくろうと志を持って集まっているのに、仕事以外のことでモメたりしてエネルギーを浪費したりしてはいけないのではないか。

ダイヤル・サービスグループは、女性企業の草分けとして、実験室としての役割も担っているはず。 いい見本を残す責任がある。 新しい女性文化をみんなで作ろう」と。

それ以来もう二十数年、「われわれの会社はプロフェッショナルな集団であって、そういう個人的な問題は一切会社に持ち込まない」という原則でやってきています。

個人的な話を持ち込む関係だと、「この間の家庭問題どうなった? 具合が悪ければ休んでもいいわよ」と、どんどん日なたの雪だるまのように崩れ来ちゃいますよね。

そういう雰囲気を一度許すと、今度は社内の噂、陰口がたえまなく流れたり、仕事以前のトラブルが頻発する。 そうなると、お互いが信頼し合って仕事ができないし、変なグループができて内部分裂がおきたり、モラルは著しく下がり、人間関係なんかで会社を辞めるなんていうことまで起きてしまうのです。

そう言うと一見冷たいように思われてしまうかもしれませんが、そうではなくて、規律をきちんと決めているからこそ、何かあったときは本当に親身になってみんなで助け合うことができるのです。 そうしたメリハリが大切だと思います。 おかげで今は、社内のゴタゴタは、一切耳にすることがなくなりました。

ここまで言い切る厳しさを、男性はなかなか持つことはできませんよね。だからこそ、女性の集団のマネジメントは難しいのでしょう。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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