練達のレッスンプロを思わせる「文章術」、いや「仕事術」の本〜「10倍早く書ける 超スピード文章術」上阪徹著

私がこの本を手にとったのは、文章を早く書きたいという実際的な理由からではなくて、著者である上阪さんのことを知りたかったから。

毎月1冊は本を仕上げ、さらに他の媒体への記事も精力的にこなされて、一月に書く文字は15万字。しかも23年間一度も締め切りを破ったことがないというのは、私のようなこの道の素人から見れば超人的。 どんな仕事の進め方をしておられるのか、そこに興味がありました。

 

この本のエッセンスは、序章のおしまいにある4行。

 

文章を書くことが決まった瞬間から、常にアンテナを立てている。
そしてどんどん素材を集める。
そうすれば、書く前に、書く内容が準備されている状態になる。
だから書くことに困らず、速く書けるのです。

 

つきつめればこの4行に集約される内容を、具体的に、かつ親切に、しかも実例を使って説明してくれるのが本書です。その分かり易さは、レッスンプロを思わせるものがあります。すごい。

この「アンテナを立てる」を「仮説を立てる」に置き換えると、私たち戦略コンサルタントの仕事の進め方と極めて近いものがあると思い至りました。

それはそれとして、私がとくに感銘を受けたのはつぎの2点です。

 

”相場観” を得る

 

読者の「おもしろい」を設計するために周辺状況をつかむことを、私は ”相場観” を得る、と呼んでいます。

 

そのためにはどうすればよいのか。

 

読み手が触れている「情報」に自分も触れてみる。

 

読者を決めたら、その読者の「相場」を常につかんでおく。

 

”相場観”は「武器」であり「防具」にもなる。

 

これは、本当にその通り。とくに「防具」にもなるというのは至言だと思います。

 

形容詞は使わない

 

「形容詞を使わない」と決めた瞬間、必然的に素材に意識が向く。

 

これは、目から鱗でした。

 

 

この本は2017年8月に出たものですが、上阪さんには2010に書かれた「書いて生きていくプロ文章論」という本もあります。こちらは先輩ライターが後輩に懇切丁寧に心得を伝授するという趣です。さすがはミシマ社。

「超スピード文章術」はより一般的な読者に向けられたものですが、格段にわかりやすく仕上がっているのは編集者の功績も大きいかと思います。

上阪さんもあとがきでクレジットされていますが、ダイアモンド社の今野良介さんという方。このわかりやすさは尋常ではありません。これもプロの技ですね。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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