すかいらーくに学ぶ、兄弟経営のコツ

今月の日経新聞の「私の履歴書」は、すかいらーく創業者の横川竟(よこかわ きわむ)さん。

今朝(9月8日)の第8回で、四人兄弟で創業されたご経験をもとに、兄弟で揉めないコツについて語っておられます。

ファミリービジネスの専門家としての立場から、学ぶべき点を補足してブログにまとめてみました。

ファミリービジネスの世界でいちばん大きな課題は、私にとって中心テーマの「事業継承」なのですが、「兄弟経営のトラブル」というのも結構あります。

兄弟(もちろん姉妹も)で経営することが悪いわけではもちろんありません。仲良く力を合わせて立派な会社をつくられているケースはたくさんあります。

ただ、ものごとの常として、良い面と悪い面があるんです。

良い面は、兄弟姉妹で力を合わせればすごいパワーが出るということ。事業を立ち上げるときには、これは大きなプラスです。

悪い面は、こじれると取り返しがつかないくらいに揉めてしまうこと。いわゆる「骨肉の争い」というやつですね。

横川竟さんは四人兄弟の三男。商才に恵まれた竟さんがリードする形で起業を計画したのですが、人手が足りないということで次兄と弟が参加。1年後に長兄も参加しました。

次兄が社長、長兄が専務、竟さんと弟さんが常務という体制で始めたとのこと。 素晴らしいのは、竟さんの発案でルールを決めたことです。

1)奥さんは働かせない。
2)子供は会社に入れない。
3)給料は四等分。
4)ルールを守れないときは出資金を放棄して会社を去る。

少子化が進む現在、四人兄弟で会社を経営するということはさすがに珍しくなるのでしょうけれど、このルールからは学ぶべきことがたくさんあります。 順番にご説明しましょう。

ルールを決めて、しっかり握る

兄弟姉妹であっても、決めごとは明確に文章化すべきです。 そこでいちばん大切なことは、兄弟のあいだでの序列と、役割分担。

兄弟経営でうまくいっている会社は、みなさんこの点がしっかりしています。逆にいえば、このあたりを曖昧にしたままで成功している会社を私は知りません。

すかいらーくの場合、もっとも商才に恵まれていたのが三男の竟さんですから、序列を明確にしないと、社員からみて誰の言うことを聞けばいいのかわからなくなる可能性が大きかったのだと思います。

給料は四等分というのはユニークですが、これは序列と処遇は別であるという仕組みで、すかいらーくとしては意味があったという話でしょうね。

一般には、役割分担に応じて明確に処遇に差をつけるほうが、のちのちトラブルを招きません。

配偶者は経営に関与させない

別に男女の差があるというという話ではなくて、姉妹の場合には夫を関与させるべきではないということですね。

理由は簡単で、兄弟(あるいは姉妹)の和が乱れるリスクが増えるからです。

以前コクヨの黒田会長に伺った話です。

お父様が社長であられたころ、黒田さんと弟さんの奥さんを個別に呼び出され、互いに意見があるときでも直接伝えることはせず、必ずお父様に申し上げるように厳命されたそうです。

「火種は未然に消しておかないとね。」とお父様はおっしゃられたとか。これこそ知恵というものです。

子供の扱いもルールで決める

子供を会社に入れてはいけない、ということではありません。入れたほうが良い場合だってありますし、ファミリービジネスとして発展させたいのであれば、子供に入ってもらわないと話になりません。

大事なのは、入れることを許すのか、許さないのかもルールで決めて、兄弟でそれを守るということです。

創業世代から第二世代、第三世代へと進むにつれて、ファミリーと経営の関わり方も定める必要が出てきます。

「それぞれの家から一世代で経営に参加するのは一人だけとする。」というように。

成功しているところは、みなさんルールをお持ちです。このあたりについては、いずれまたご説明したいと思います。

退出のルールも決めておく

すかいらーくの横田家が非凡なのは、ここまで決めていたということです。これはなかなか例がありません。

ただ、実際にそのルールを守れるかとなると話は別で、それがどうなったかについては、連載の続きを待ちましょう。

ここまでお読みくださって、ありがとうございました。

タイトルの写真はガストの看板です。「すかいらーく」という名前の店舗はなくなって、「ガスト」になってしまっていることはご存知のとおりです。

この記事を書いた人

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元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して17周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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