フィンランドを代表する建築家といえば、なんといってもアルヴァ・アアルトでしょう。東京駅のステーション・ギャラリーでアアルトについての展覧会が開かれていると聞き、仕事の合間に足を運びました。私は前世はフィンランド人だったかと疑うほど、かの国に愛着があるのです。
今回の展覧会はヴィトラ・デザイン・ミュージアムと、アルヴァ・アアルト美術館の企画による国際巡回展。アアルトがその生涯で手がけた広範囲な仕事をかいつまんで紹介するという趣きです。
ただし… アアルトにはじめて接する方にはよいのかもしれませんが、アアルトの魅力を知っている人にとっては、残念ながら、やや物足りないものがあるというのが私の感想です。
「建築は凍れる音楽」というのはゲーテの言葉。反対に、音楽を著名な建築物に例えることもあります。モーツアルトの交響曲第41番「ジュピター」の第四楽章のコーダを、「まるでケルンの大聖堂のようだ」と的確に表現したのは吉田秀和先生でしたっけ。
アアルトの作品を解凍すると、それはやはりシベリウスの音楽が聴こえてきます。彼の代表作のひとつであるフィンランディア・ホールは、私には交響曲第5番のように感じられます。第2番ではなく。
私がアアルトに魅かれるのは、その美しい個人宅(あるいは別荘)のデザインです。彼はかなりな数の個人宅をデザインしているのです。
とりわけ、自然との調和が素晴らしい。それはおおがかりな交響曲ではなく、タピオラやアンダンテ・フェスティーヴォ、ラカスタヴァなどの交響詩、あるいはキュッリッキなどのピアノ曲のイメージです。自然との調和という点でいうと、我が国が誇る聴竹居に通じるところがあります。
今回の展覧会で弱いのは、まさにこのあたりの作品の展示ではないかと感じます。欲を言えば、ですけれど。
でも、おすすめです。4月14日まで。