シルヴァン・カンヴルランの後を承けて第10代読響常任指揮者に就任したセヴァスティアン・ヴァイグレの「就任披露演奏会」。前任者の任期の最後が圧倒的に盛り上がっていたので、後任はやりにくいですよね。さて、どうなるかと期待しつつサントリーホールへ。
曲目は前半がヘンツェの「7つのボレロ」、後半がブルックナーの交響曲第9番。
ヘンツェ: 7つのボレロ
変拍子の面白い曲。世界初演が2000年といいながら、バリバリの現代音楽という感じはありません。大家の手練れによる作品という印象。編成(とくに打楽器)はとても大きくて、ステージいっぱいに並びます。ただ、実際に曲を聴いてみると、ここまでの編成が必要なんだろうかという疑問は残りました(笑)。
日本初演はやはり読響で、アルブレヒトの時代だそうです。今回ヴァイグレが取り上げた意図がどこにあるのか、プログラムにも記載はありません。本当はそういうあたりの解説が欲しいですよね。
ブルックナー:交響曲第9番
実は私のブルックナーへの入り口は、この曲でした。朝比奈先生と大フィルの演奏をFMでエアチェックして聴き込み、初めての実演は1980年、あの東京カテドラルでの連続演奏会。9番を担当したのは新日フィルでした。もしかするとホルンのトップはN響を引退後に客演首席を務められていた千葉馨さんであったかもしれませんね。
CDで愛聴しているのはラファエル・クーベリックがバイエルン放送交響楽団を指揮したもの。Orfeoから出てますが、これは大変な名演です。カップリングで入っている、ヘンデルのコンチェルトグロッソも素晴らしい。
この曲に接すると、どうしてもこうした記憶をベースに聴くことになってハードルが上がってしまうのですが、それでも今回は秀演であったと思います。
ヴァイグレは私の1歳下ですから、この曲の録音に関していえば私と同じような演奏を聴いて育ってきた筈です。彼はもともとはホルン奏者、しかもベルリンの歌劇場の首席であったわけですから、当時のシェフであったバレンボイムの影響を受けたと考えられる訳で、当時同じく副指揮者であったティーレマンのような前時代的な演奏になるのかと予想していました。が、むしろケンペを思わせるような演奏であったのは、私にとっては嬉しい驚きでした。(ケンペは9番の録音を遺していないので、「ケンペが振ったとすれば」という意味です。)
優れた管楽器奏者出身の指揮者に共通する美質として、管がよく聞こえます。弦をことさらに抑えているわけではないので、要するに設計と耳が良いのでしょう。こういうあたりがケンペ的であると思わせるところです。
唯一、難点があったとすれば、それが100点に2点足りないところなのですが、「間」が足りないと感じられたこと。前時代的にパウゼを取って欲しいというのではないのですが、楽想の転換に余韻が欲しいと私などは思ってしまいました。
これからヴァイグレのリヒャルト・シュトラウスは期待できると思います。さっそく「サロメ」を振るみたいですけれど、さてどうしようかな。
オケについて
例によって木管に偏した感想となりますが、よかったです。敬称略で、フルートはドブリノブ、オーボエ蠣崎、クラリネット金子、ファゴット井上。ホルンの松坂さんはもうちょっと…。