「創業者からの事業継承がうまくいかないのは〜」
ドドドン(太鼓の音)
「ちゃんと準備していないから〜」
チコちゃん風に言えばこんな感じでしょうか。身も蓋もない回答に思われるかもしれませんが、私の経験上、そういう場合が多いのです。
前々回のブログで、創業者からの事業継承がうまくいかない理由のひとつとして、山登り(創業)のスペシャリストである創業経営者は、後継者に自分と同じ資質を求めてしまいがちであるとご説明しました。
うまくいかない理由はそれだけではありません。もっと大きな、根本的な理由があるんです。
創業経営者にお会いして「事業継承のこと、お考えですか?」とお伺いすると、ほとんどの場合、「もちろん」という答えが返ってきます。
しかし。 この場合の「考えている」は「気になっている」という意味でしかありません。もっと厳しく言えば、ちゃんと考えていないのですね。
創業経営者は different animal である
「創業経営者は、別の生き物である。」ということですね。
どういう点でそうなのかというと、「自分は死なない。」と思っていることです。ウルマンの「青春」という有名な詩を、社長室に額装して飾っておられる方が多いのも、うなづけますでしょう?
自分だけは死なないとお考えである以上、後継者へのバトンタッチを真剣に考える道理はありません。
緊急性と重要性のマトリクス
そこまで自信に溢れていない場合でも、もうひとつ罠があります。
緊急性x重要性のマトリクスはご存知でしょうか?
重要性は高いけれど差し迫っていない(と思われる)課題は後回しにされがちであるという話です。
創業経営者にとっての事業継承は、まさにこれに当てはまってしまうのです。
事業継承が大事なことはわかってる。でも自分が明日死ぬわけではないし… というわけです。そうなると、どう転んでも、ちゃんと考えるということにはなりません。
まず決めるべきことは、継承の時期
なにを最初に「ちゃんと考える」べきかというと、それは事業継承のタイミングです。
ここでのポイントは、逆算して考えるということ。
先日のファミリービジネス学会でスピーチしてくださった尾畑酒造の尾畑留美子
さん(4代目)は、「目が黒いうちに事業継承」とお父様を説得されたとおっしゃっておられましたが、まさにそういうことです。
私は、「後継者に三年任せてダメだったらご自身が再登板する」という前提で時期を決めてくださいねと申し上げることにしています。気力、体力がまだ充実している間に、着手してくださいということです。
面白いもので、時期を定めてしまうと、考えなければならないことがはっきりしてきます。先程のマトリクスでいうと、重要かつ緊急のマス目が埋まってくるのです。
もちろん、「ちゃんと考える」べきことはまだまだあります。 それはまた回をあらためてご紹介したく思いますが、継承の時期を定めないとすべては進まないということは、ほんとうに重要なことなのです。
これをキチンと決めないと、チコちゃんに叱られますよ。