老舗の気概と矜持に感服:鍵善美術館「ZENBI」

鍵善良房といえば京都を代表する老舗中の和菓子屋さんのひとつ。四条通りに面したお店は、これぞ老舗といった落ち着いた佇まい。私は高校2年生の修学旅行で京都を訪れた際、ひとり勇気を出して足を踏み入れて以来のファンです。有名なのは「くず切り」ですけれど、それ以外のお菓子ももちろん美しくて美味しい。ただ、お茶を嗜まない私が鍵善さんについて語ることは、本当は僭越の極みなのですが。

鍵善さんは単に古いお店だというだけでなく、代々のご当主は祇園祭を支えて来られました。祇園祭はなんといっても山鉾巡行が有名ですが、神事としての中核は神輿渡御です。7月17日に神輿を八坂神社から御旅所へ導き、24日にお環りいただく際に、神輿に随行するのが「宮本組」。その活動はNHKでも取り上げられましたが、詳しく知るにはこの本が便利です。

鍵善さんの先代は、この宮本組の組頭でいらっしゃいました。現当主の今西善也さんも中心メンバー。私はかねてより今西さんの twitter を愛読していて、鍵善さんが美術館「ZENBI」を設立されることを知りました。

その初日は1月8日。奇しくも緊急事態宣言の初日に重なってしまったのですが、私は関西での予定を調整してZENBIを訪れることに。

大和大路の 「カルミア」でお昼をいただいた後、ちょっと下って東に入って、ZENBI を目指して歩きます。鍵善さんは ZEN Cafe というとても雰囲気の良いカフェをされていて、私はなんとなくZENBI はそのカフェの上のフロアなのだろうと思いこんでいました。

ところが実際には ZEN Cafe に入る路地の入り口左側の古民家が丸々一軒改装されていて、それが ZENBI でした。想像を上回る規模にびっくり。

エントランスです。初日なので、胡蝶蘭がたくさん。

記念すべき初日の入場券。1000円。鍵善さんが費やされた出費と労力を考えれば、破格の安さと言わねばなりません。

記念品としていただいた和三盆。本店で売られているものよりも、ちょっと小ぶりな特製品です。

館内は撮影禁止なのでご紹介できませんが、とてもセンスの良いデザインと内装でした。さすがです。開館特別展は「黒田辰秋と鍵善良房ー結ばれた美への約束」。鍵善さん本店の重厚な調度を手がけた人間国宝の作品展です。

素晴らしい。ひたすら見惚れました。

併設されているミュージアムショップで、特別展の図録を売っていたので迷わず購入。非常にレベルの高い内容です。

図録の冒頭に当代の今西善也さんの「ごあいさつ」があります。ちょっとだけ引用しますね。

この町から頂戴した高い文化の恩恵を皆様に少しでも知って頂き、この町の文化サロンのような場を継承していければというのがこの美術館の目的です。

美術館では黒田辰秋の作品を中心に優れた美術工芸の世界をご紹介するとともに、京都ならではの文化を発信し、日常の暮らしの中にある美を後世に伝え残す場所になればと思っています。なによりこの町が大事にしてきた美に対する意識をこの町に訪れた皆様にも知って頂き、将来へと伝えていければ幸いです。

老舗の気概と、矜持に触れることができました。足を運ぶ価値は十二分にあります。おすすめです。

この記事を書いた人

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して15周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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