日本フィルハーモニー交響楽団第703回東京定期演奏会

日本のオーケストラのシーズンは9月に始まります。 先週の土曜日(8日)の昼下がり、日本フィルハーモニー交響楽団の今シーズン開幕戦を聴いてまいりました。 例によって、ちょっとマニアックに感想を書いてみました。

日フィルの第703回東京定期演奏会は、ご覧のように意欲的なプログラム。 フランスもので構成された、ちょっと凝ったラインアップです。

日フィルのプログラム

「三善晃って日本人でしょ?」と思われた方、それはそうなのですが、彼はフランスに留学して作曲を学んでいて、四曲めの作曲者であるデュティユーの影響を強く受けた人。

ですので、近現代のフランス曲のプログラムと言ってよい内容です。

指揮は今や日本を代表する中堅指揮者となった山田和樹(新ヤマカズと呼ばれています)。彼はフランス語圏で評価が高く、またフランスものを得意としているので、期待が高まりますね。

このようなマイナーな曲を集めたプログラムが成り立つくらいに、わが国の聴衆も成熟したと思うと感慨が深いです。(オタクが増えただけだという声もあるでしょうけれど。)

では感想を。

プーランク: シンフォニエッタ

洒落たフランスの焼き菓子のような作品です。 ときおり浮かびあがってくる管楽器のソロは案外と技巧的なのですが、それをさりげなく吹かないと野暮になってしまいます。

今日もまた読響からエキストラで戻ってきていた日橋さんのホルン、そして新婚で気合が入っているクリストフォーリさんのトランペットは出色でした。

新ヤマカズさんには、この曲は相性が良いでしょうね。よい演奏でした。

三善晃: ピアノ協奏曲

多彩なパーカッションが並び、ステージが一杯になる大編成の曲。面白い曲でした。ピアノは萩原麻未さん。テクニック十分。

ちょっとオケを鳴らしすぎて、ピアノソロが聞こえにくい。もともとピアノソロとオケが対峙するようには書かれていない曲だとはいえ、この曲をこう振るのはどうかなあと思いましたね。

デュカス: 交響詩「魔法使いの弟子」

「ファゴットって、どんな音色なんですか?」と尋ねられると、私たちファゴット吹きは、この曲の主題を吹いて見せるか、白鳥の湖の「三羽の白鳥の踊り」の伴奏の部分を吹くか、ということになります。

ディズニーの「ファンタジア」のおかげで、やたら有名になった曲ですね。原曲ではなく、ストコフスキー編曲版が演奏されました。

私たちとしては、どうしても原曲との違いが気になってしまうわけですが、ファゴット関係者以外には、素直に楽しめる名演であったと思います。

ファゴット首席の鈴木さん、ブラヴォーでした。

デュティユー: 交響曲第2番 「ドゥーブル」

これがメインでした。とても素晴らしい演奏。

「ドゥーブル」は英語では「ダブル」です。ステージ上に小さいオーケストラがまず並び、その後ろに大きなオーケストラ。ですので、ダブル。

ただ、2つのオケが対等に使われるというのではなくて、大掛かりな協奏交響曲と捉えたほうが良いでしょうね。

マルタンが管を7本使う協奏曲を書いてますが、あんな感じ。あるいは、ストラヴィンスキーのプルネルラみたいなもんですね。

これがこの日の白眉でした。クラリネット→オーボエ→フルートと旋律を受け渡していくところが散見されるのですが、その見事なこと! そして、ひんやりとした音色のピアニシモ。なんと素晴らしいことでしょう。 日フィルの今年の開幕戦を飾る大名演といって良いと思います。

そして雑感

これほどの名演だったのに、聴衆のウケは今ひとつ。 私の両隣の方々は、ほとんど寝ておられました。 うーむ、なんででしょう。

三善晃の曲のフォルティッシモでも目を覚まされないのには、ほとほと感心してしまいました。

日フィル、着実に演奏水準が上がってきています。 これからも期待しましょう。

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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