事業継承とは、山登り区間が最初にある駅伝である。

「事業継承とかけて、駅伝と解く。」
「そのこころは?」
「世代を越えて事業を繋ぎます。」

これでは「山田さ〜ん、座布団1枚差し上げて!」とはなりません。もう少し深いものがあるからです。

たしかに事業継承は駅伝に似ているが…

箱根駅伝をご存知ですよね? 往路最後の第5区は箱根の山を駆け上がる厳しいコースで、ここで大逆転が起きることもしばしばあります。

事業継承の場合、第5区ではなくて、しょっぱなの第1区が過酷な山登りです。この第1区を走り抜けてこそ、「創業経営者」と呼ばれ、尊敬されるのです。

多くの場合、第1区で走者が力尽き、第2走者につなぐことができずに終わるというのが起業の現実です。なにしろ5年生存率は15%なのですから。

とにかくいろいろと大変な山登り区間が最初であるというのが、事業継承が箱根駅伝と似ているようで異なる部分です。

区間毎に走者に要求される資質は異なる

第1区の山登りの次の第2区も山登りであるということは、まずありません。創業経営者と第二世代に要求される資質は違います。この点は駅伝と同じですね。各区間に最適な資質を持った走者を配しないと、勝つことはできません。

創業経営者からの事業継承が難しいことの理由のひとつは、創業経営者が第二世代にも山登りの資質を求めてしまうところにあります。それが誤りであることが、なかなかわかってもらえないのですよね。

(創業経営者からの事業継承の難しさについては、また回ををあらためてご説明する予定です。)

引き継ぐタスキは、必ずしも事業ではない

ファミリービジネスを存続させるためには、事業環境の変化に応じて企業として姿を変えていかなければなりません。

ただし、世代毎に事業内容をコロコロ変えていたのでは、存続自体がおぼつかなくなります。

タスキは事業そのものでなくて、創業の理念です。これを事業環境の変化に応じて、どのようにアレンジするかが、各世代の経営者の仕事となります。

事業継承の場合、ゴールはひとつではない

箱根への往復10区間と決まっている駅伝とは異なり、ゴールはその会社によって異なります。

途中で脱創業家を決断するのあれば、そこがゴールです。長寿企業を目指すのであれば、タスキをつなぎ続けること自体が、各世代にとってのゴールとなります。

事業継承、奥が深いでしょう?

P.S. タイトルの写真は箱根駅伝のゴール近くの小田急山のホテルから撮った富士山の姿です。 箱根駅伝の画像を探したのですが、なかなか見つからなくて…

この記事を書いた人

元永 徹司

元永 徹司

ファミリービジネスの経営を専門とするコンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループに在籍していたころから強い関心を抱いていた「事業承継」をライフワークと定め、株式会社イクティスを開業して12周年を迎えました。一般社団法人ファミリービジネス研究所の代表理事でもあります。

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