都響がスタートさせた、平日のお昼の定期演奏会Cシリーズ。12月の矢部コンマスのバルトークを万全の座席で聴くために、この秋からBシリーズに加えて定期会員になりました。水曜日の14時からのコンサートでの集客はいかにと危惧していたのですが、なんと8割を超える入り具合。これは高齢化の奇貨と言うべきなのでしょうね。
「スッぺ&オッフェンバック生誕200年記念」のコンサートということで、かなりマイナーな曲が並ぶコンサートとなりました。
前半がスッぺの喜歌劇「軽騎兵」序曲と、オッフェンバックのチェロ協奏曲「軍隊風」。これは日本初演。後半に入って、スッぺの喜歌劇「美しきガラテア」序曲、オッフェンバックの歌劇「ホフマン物語」から「間奏曲」と「舟歌」。最後はオッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲。指揮はフィリップ・フォン・シュタイネッカー。チェロは25歳のエドガー・モロー。
スッぺ:喜歌劇「軽騎兵」序曲
カープファンにとってはお馴染みの曲。というのは広島市民球場の頃から、試合開始のファンファーレがこの曲の冒頭部分だからです。
このオペレッタは滅多なことでは上演されず、いろいろ調べてもあらすじすらよくわからないというシロモノ。序曲だけはしかし、圧倒的に有名なんですよね。もっとも冒頭部分だけですが。
軽騎兵というの騎兵の兵種の一つで、偵察や後方撹乱を主任務とします。他には槍騎兵、猟騎兵、竜騎兵があるのですが、花形は「ここぞ!」という局面で投入される竜騎兵(胸甲騎兵ともいいます。)。なので、なんでまた軽騎兵が題材なんだかよくわかりません。まあどうでもいい話ではありますか…
この日のペットのトップは高橋名人。立派なソロでした。ブラヴォー!
オッフェンバック:チェロ協奏曲「軍隊風」
もともと完成されなかった曲を復元し、楽譜が出版されたのは2005年という、古いけれど新しい曲です。演奏時間は破格の45分。これは世の中のチェロ協奏曲と比べても最長の部類に属します。
先だっての読響でもプフィッツナーのチェロ協奏曲「遺作」が演奏されましたが、これも復活蘇演されたものでした。最近のこの傾向の背景には、意外にチェロ協奏曲が少ないという事情があります。なにしろ、モーツアルトも、ベートーヴェンもシューベルトもブラームスも、チェロ単独のための協奏曲を書いていないのですから。チェロ業界としては、レパートリー拡大に力を入れているということではないかと思いますね(笑)。
オッフェンバックは「チェロのリスト」と呼ばれた名人だったとのこと。その彼が自分の技巧を存分に披露することを意図した曲なので、ハイノート連発。三分の一くらいはヴィオラの音域なのではないかというくらい。
しかしエドガー・モローが、それを楽々と、しかも完璧に弾くんですよ。まさに、4回転ジャンプを連発する羽生結弦くんのように。(ルックスは違いますけれど。)
このひとは凄い。「後生畏る可し」ですね。その昔、ヤーノシュ・シュタルケルが共産政権下のハンガリーから西側の楽壇に登場したときにはこんな感じのセンセーションを巻き起こしたのではないかと思うレベルでした。これから楽しみです。
スッぺ:喜歌劇「美しきガラテア」序曲
この時代のオペレッタは、今のブロードウェイのミュージカルのようなもの。職人的に起承転結をはっきりさせて、よく鳴るように作られた曲、という印象です。
オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」から「間奏曲」と「舟歌」
これも感想は同じ。楽しく聴ける曲。
オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」序曲
この日に演奏されたなかで、文句なく一番有名な曲。ただ、解説を読むまでは、ビンダーという人がオペレッタの中から曲を選んでつなげたものであることを知りませんでした。今回の解説を書いている相場ひろさんという方は優秀で、とても情報量が多い。中にはこんな一節があって、トリヴィア好きとしては唸らされました。
なお、このギャロップはしばしば誤って「フレンチ・カンカン」と呼ばれるが、オッフェンバックの時代にはまだフレンチ・カンカンという踊りは存在しなかった。女性ダンサーがスカートをまくり上げて踊る刺激的な演出が導入されたのは、作曲者没後のことである。
指揮者について、オケについて
フィリップ・フォン・シュタイネッカーさん。私はこのひとを知りませんでしけど、アバドのアシスタントとかやっていたひとらしい。わかりやすい棒で、なかなか良いと思いました。また呼んでもらっても良いかなと。
都響は全力投球。木管のアンサンブルはお見事でした。フルートはN響の甲斐さんが吹いておられました。柳原さんは東響でトラで乗っておられたとのこと。このあたりは面白いですよね。