いま京都で一番人気の展覧会といえば、京都国立近代美術館の東山魁夷展でしょう。大行列。『本当の「あお」に出会う』というサブタイトルも素敵です。
しかし、私の「いち推し」の展覧会はこれではありません。 すぐ近くの細見美術館と「みやこめっせ」で開かれている「京都の御大礼」です。
「京都の御大礼」は近代の天皇の即位式と大嘗祭に関する資料を集めた展覧会で、そのマニアックさは圧倒的です。
即位の大礼はそんなに頻繁にあるわけではないので、次代のために有職故実を伝えようという意図によって詳細な公式記録が残されてきました。
また、江戸時代に入ってからの公家は、ある意味で儀式で食っているようなものでしたので、それぞれの家のマニュアル的な記録も、詳細を極めたものが残されています。
さらに、大正、昭和の二天皇の即位大礼は大日本帝国の国威発揚の場でもありましたから、海外の目を意識した記録も整っています。
こういった膨大な記録を取捨選択し、即位の大礼の概要と、その変遷を明らかにしているのがこの展覧会。これはすごいです。
もともと律令制の導入とともに整備された即位の大礼には、唐の皇帝の即位式の儀礼が反映されていると見るべきで、それがタイムカプセルのように日本にだけ残っているのは興味深いですよね。
今回の展覧会でもう一つすごいのは、江戸時代の東山天皇の即位大礼の1/4のジオラマです。 第二会場である、みやこめっせの地下1階に陳列されています。(こちらは入場料はタダです。)
細見美術館は館内写真撮影禁止ですが、このジオラマはOK。何枚かご紹介します。全体像をお見せしたいのですが、大きすぎてダメなので部分のみ。
即位の大礼が行われる紫宸殿に、居並ぶ公家たち。官位に応じて、どこに並ぶのかも詳細に定められています。階(きざはし)の下は武官たちですね。
高御座(たかみくら:玉座のこと)の中におられるのは即位したばかりの東山天皇。
高御座の前にいるのは唐風の団扇で天皇の姿を隠すのが役目の女官たち。
高御座を斜め後ろから見たところ。明治天皇のときにはドタバタしていて、高御座なしで即位されたそうです。
これだけの規模と内容の展示は例がないとの評判ですので、ご興味のある方はぜひ。大嘗祭についても、かなり詳しい展示があります。